Homeインド系D2Cブランドが牽引するインド・オーラルケア市場【2026年】Trendインド系D2Cブランドが牽引するインド・オーラルケア市場【2026年】

インド系D2Cブランドが牽引するインド・オーラルケア市場【2026年】

インドのオーラルケア市場は2024年に20.3億ドル規模とされ、市場規模は年平均成長率(CAGR)5.18%で拡大、2033年には32億ドルに達する見通し(*1)です。日本の市場規模までは届かないものの、D2Cブランドを中心に日々新たなブランドや製品カテゴリーが拡張していく様子を体感しています。

インドのオーラルケア市場の変化を見ていると、製品カテゴリーや消費者ニーズといった点で、2000年ころから日本が辿ってきたものとはなにか違いを感じます。その一つが、消費者層の違いでしょう。日本のオーラルケア市場を牽引してきたのは中・高齢層でした。一方、インドでは35歳以下のデジタルファースト世代が、市場成長を支えています。

ここでは、インドのオーラルケア市場で急拡大する新興D2Cブランドの紹介から、消費トレンドの考察、そして消費者マインドの変化を紹介します。

 市場の成長要因|電動デバイスやプレミアム製品への需要シフト

インドオーラルケア市場がCAGR 5.18%と大きな成長が予測されている背景には、プレミアムな歯科製品(ホワイトニング、電動デバイスなど)への「需要シフト」と、これらを提供するD2Cやeコマースといった「マーケットプレイス」の発展など、さまざまな要因があります。

まずは、インドオーラルケア市場の歴史を振り返り、現在地点を確認していきましょう。

1. プレミアムセグメントが成長を牽引|市場の構造変化

Colgate-PalmoliveやHindustan Unileverといった大手外資系ブランドが歯ブラシという習慣をインド市場に定着させた2000年代。現在では都市部89.2%、農村部でも67.4%が日常的にブラッシングする習慣が浸透しています(*2)。

以下は、過去20年から現代に至るまでの市場の変遷をまとめた一覧です。 

時期市場構造主力カテゴリー消費者志向特徴的プレイヤー
約20年前
(2000年代前半)
マス市場中心通常歯磨き粉・手動歯ブラシ価格重視・虫歯予防中心Colgate-Palmolive
Hindustan Unilever
約10年前
(2015年前後)
機能分化開始ハーバル歯磨き粉・知覚過敏対応自然志向上昇・機能性重視Dabur
Patanjali Ayurved
パンデミック後
(2020–2022)
衛生意識拡大抗菌系・マウスウォッシュ・免疫訴求型健康・衛生重視既存大手ブランド
インド系D2Cブランド
現在
(2024–2026)
プレミアム拡張期ホワイトニング・電動歯ブラシ・ホワイトニングキット審美・美容志向
都市型中間層拡大
Colgate Visible White強化
インド系D2Cブランド

コロナパンデミック以降、インドでは健康意識が変化し、ウェルネス分野や企業透明性への関心が高まりました。特に若年層においては「pleasure-preventive health(快楽的予防健康)」志向が強まり、プレミアム製品に積極投資する変化が起きています。

従来(2020年前)のマス市場シェアが85%超だったのに対し、2025〜2033年の予測ではプレミアムセグメントが30〜35%へ拡大する構造変化が起きています(*3)。

2.「出会う場所」と「買う場所」の統合型マーケットプレイスが購入を促進

D2C市場の拡大も、オーラルケア市場の成長を後押ししています。D2Cセグメントは2030年にかけてCAGR 20〜25%の拡大が予測されており、この流れはD2C消費の80%を占めるZ世代が牽引しています(*4)。

インドの若年層の購買行動は、「情報の探索」から「決済」までが一つのエコシステムで完結しているのが特徴です。このシームレスな体験を主要EC(Amazon・Flipkart・Nykaa)や急成長するD2Cブランドが支えています。

  • 60〜70%がSNSで新ブランドを発見(*5)
  • 68%がD2Cでの購入を経験(*6)
  • 79%が「知名度より自分の感性に合うニッチなブランド」を支持(*7)

日本のZ世代と比較すると、日本のD2C嗜好層は30.5%とインドの半分以下に留まり、モールでの検索やレビューを重視する慎重な購買スタイルが主流です。これは平均年齢が28歳というインドの特徴的な人口動態からも影響を受けているでしょう。

インドのD2Cセグメントは2030年にかけて年平均成長率(CAGR)20〜25%の拡大が予測されており、上記でご紹介した新興ブランド「Perfora」は2024年度に前年比180%増の売上を記録するなど、オーラルケア市場での存在感を示しています。(*4)

3. SNSが牽引するグローバル思考と選択肢の拡大

インドの若年層がオーラルケアに投資する動機の変化を語るうえで欠かせないのが、SNSを通じた欧米的な口腔ケア文化の流入です。InstagramやYouTubeを中心に世界的なトレンドを日常的に収集する彼らは、予防・健康という従来の目的にとどまらず、ファッションやステータスとしてオーラルケアを捉える欧米の価値観を積極的に取り込んでいます。

特にZ世代では、こうしたグローバルな審美意識の流入を背景に「Smile aesthetics(美しい口元)」への関心が急速に高まっています。歯のホワイトニングや電動デバイスへの需要は、健康管理というよりも自己表現・自己ブランディングの文脈で語られるケースが増えており、歯科は医療カテゴリーから美容・ライフスタイルカテゴリーへとその位置づけを変えつつあります。

SNSが「何が格好いいか」を定義し、D2Cブランドがその答えを素早く製品化する——このサイクルこそが、インドのオーラルケア市場におけるプレミアムシフトし、市場を拡大させる構造的な推進力となっています。

消費者マインドの変化|3つのトレンド

市場成長の背景には、インド特有の消費者マインドの変化があります。その根底には社会構造の違いがあります。日本のような国民健康保険制度が存在しないインドでは歯科医療は自己負担が前提で、歯科は「緊急時に駆け込む場所」ではなく「より良く生きるためのウェルネス」として捉えられています。

1. 健康は気分を向上させる「pleasure-preventive health(快楽的予防健康)志向

日常的なウェルネス投資として「pleasure-preventive health」(快楽的予防健康)志向という概念について少し深掘りしていきましょう。

これは「気分向上・ストレス軽減」を目的とした消費者行動です。Mintelの調査*8によると、現代の消費者は健康的な食事や運動を、単なる治療目的ではなく「気分を良くし、ストレスを軽減する」ために選択しています。身体的な健康だけではなく、精神面にも働きかけるウェルネスです。

この流れを加速させているのが、SNS上のインフルエンサー(KOL)の存在です。現在SNSでトレンドとなっている、就寝前のルーティンを紹介するコンテンツ「#getunreadywithme」では、オーラルケアは「充実したライフスタイル」の一部としてコンテンツに組み込まれています。

 
 
 
 
 
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彼らは「pleasure-preventive health」(快楽的予防健康)の象徴として「享楽(プレジャー)」というキーワードをよく使います。Perforaの最新電動歯ブラシは、「気分を向上」させる」スタイリッシュな商品として紹介されてます。

「pleasure-preventive health」(快楽的予防健康)志向は、オーラルケアに止まらずスポーツ・コミュニティ・プラットフォームサービスの台頭からも伺えます。 

バドミントンやサッカーなどのコート予約やコミュニティ形成を支援する「Hudle」は、利用者が 100万人を突破し、2024年には約1.1億ルピー(約2億円)の資金調達を実施して大きな注目を集めました。 従来からジムトレーニングはメジャーであったインドですが、仲間との交流やPleasure(遊び)を通じて健康を維持・予防する本サービスの躍進は、「快楽的予防健康」が社会に浸透し始めている新たな裏付けとしても挙げられます。

2. 原材料は「自然派」中心|アーユルヴェーダ回帰と現代的なブランディングの掛け算

  新興オーラルケアブランドの多くは、アーユルヴェーダに代表されるインドの伝統的な天然成分を中心に打ち出しています。特に、D2Cブランドに共通するのは、古くから伝わる自然素材を、最新の科学技術と洗練されたデザインによって「自然派である安心感」と「適切な効果」を感じさせるよう表現しています。

3. 個人の表現として存在する嗜好品|セルフブランディング

都市部若年層においては、オーラルケアに限らず「購入するものはなぜそれを購入するのか」「その製品は自分のパーソナリティと関連性があるのか」といった購買プロセスが存在しています。

彼らは洗面所に置く歯磨き粉やデバイスのデザインをインテリアを選ぶように選んでいます。日用品にパーソナリティの表現(Self-branding)といった嗜好品としての価値を見出し、審美性の需要がDtoCブランドの特徴です。これらのブランドは、大手には真似できないスピード感と誠実なストーリーテリング(購買者の目線にたったブランドや製品ベネフィット)により、次世代の「豊かさ」を定義し直しています。

オーラルケア商品に関わらず、パッケージや、使用感使用後の「気持ち」の変化といったこれら「感覚的なブランド体験」への投資が、都市部の若年層において顕著なトレンドとなっています。

インドオーラルケア事例紹介|新興ブランド4社

以下は、モダンなデザインと機能性を両立した新興オーラルケアブランド4社の概要です。
ブランド 設立 特徴 価格帯
Perfora 2021年 テクノロジー×天然成分。「科学的かつ安心なケア」を提案。電動歯ブラシからホワイトニングセラムまで幅広く展開。2024年度に前年比180%増の売上を記録。 1,500〜3,500ルピー(約3,000〜7,000円)
Salt Oral Care 2022年 「セクシーな歯磨き粉」をコンセプトに、アルミチューブと洗練されたデザインで洗面所インテリアとしてのブランドを確立。 600〜900ルピー(約1,500円前後)
Birdsong 2022年 ニームの枝・オイルプーリングと北欧風デザインを融合したライフスタイルブランド。アパレルも扱い「コンシャス・コンシューマー」をターゲットとする。 500〜1,500ルピー(約1,000〜3,000円)
Oraza 2022年 「オーラルケアをライフスタイル・アクセサリーへ」をコンセプトに、鮮やかなカラーリングとファッション性の高いパッケージで展開。 1,000〜2,500ルピー(約2,000〜5,000円)

Perfora - デザイン性と機能性を両立したインドの新興オーラルケアブランド

Perforacareホームページより[/caption] 2021年設立。数年で数億円規模の資金調達を成功させ、インドD2Cオーラルケア市場で最も勢いのある1社。「テクノロジーと天然成分の融合」を軸に、科学的かつ安心なケアを提案するブランド。
  • 製品ライン:電動歯ブラシ・ホワイトニングセラム・マウスウォッシュ・フロスなど幅広く展開
  • 価格帯:1,500〜3,500ルピー(約3,000〜7,000円)。インド基準でのプレミアム価格を実現
  • SNS戦略:「#getunreadywithme」などのトレンドコンテンツに商品が有機的に組み込まれる
  • 成長実績:2024年度に前年比180%増の売上を記録
大手には真似できない「誠実なストーリーテリング」が特徴で、購買者目線のブランドコミュニケーションにより都市部ミレニアル・Z世代から強い支持を得ています。

Salt Oral Care - モダンでスタイリッシュなデザインと天然成分を融合したオーラルケアブランド

2022年設立。「セクシーな歯磨き粉(Sexy Toothpaste)」というコンセプトを掲げ、洗面所をインテリアとして捉える新しい切り口でブランドを確立。アルミチューブのパッケージが特徴的で、視覚的インパクトと成分の誠実さを両立させています。

  • 製品ライン:プレミアム歯磨き粉(炭・ミント・ホワイトニングなど複数フレーバー)
  • 価格帯:600〜900ルピー(約1,500円前後)。歯磨き粉としては国内最高水準の価格設定
  • ターゲット:都市部のプロフェッショナル層・審美意識が高い若年層
  • 販売チャネル:Nykaa・公式サイトを主軸としたD2C販売


「洗面所に置くものをインテリア感覚で選ぶ」という消費者インサイトを的確に捉え、デザイン×成分×ストーリーを一体化させたブランドポジションを確立。歯磨き粉というコモディティ市場において、審美的価値だけで600ルピー以上の価格を正当化できていることは注目に値します。

Birdsong - ナチュラル素材・サステナブル志向のライフスタイルブランド

2022年設立。オーラルケアを「ライフスタイル全体の一部」として捉えるブランドで、アパレルやボディケアも扱うライフスタイルブランドとして展開。北欧風の洗練されたデザインとインドの伝統素材を組み合わせた独自のポジションを持ちます。
  • 製品ライン:竹製歯ブラシ・天然粉末歯磨き・オイルプーリング用ごま油・ニームの枝など
  • 価格帯:500〜1,500ルピー(約1,000〜3,000円)
  • 素材哲学:ニーム・活性炭・ターメリックなどアーユルヴェーダ由来成分を前面に打ち出す
  • サステナビリティ:プラスチックフリー・リサイクル可能パッケージにこだわり、「コンシャス・コンシューマー」層に直接訴求
アーユルヴェーダの知恵を北欧的なビジュアル言語で再解釈することで、インド伝統回帰とグローバルなウェルネストレンドの双方を捉えている点が戦略的に秀逸。単品商品ではなくライフスタイルブランドとして成立させることで、顧客LTVの向上も狙っているブランドです。

Oraza - デザイン性と日常のプレミアム体験を重視したオーラルケアブランド

2022年設立。「オーラルケアをライフスタイル・アクセサリーへ」というコンセプトを掲げ、ファッション性の高いパッケージデザインが最大の特徴。ビビッドカラーとポップなビジュアルで、オーラルケアをファッション・ビューティーカテゴリーとして再定義しています。

  • 製品ライン:電動歯ブラシ・ホワイトニングストリップ・マウスウォッシュ・歯磨き粉など幅広く展開
  • 価格帯:1,000〜2,500ルピー(約2,000〜5,000円)
  • ターゲット:都市部の若年層・ミドル〜プレミアム層
  • SNS:ファッション文脈でオーラルケアを紹介するビジュアルコンテンツが高エンゲージメントを獲得

他3ブランドが成分やサステナビリティを軸にするのに対し、Orazaはデザインと審美性を最前面に置く差別化戦略をとっています。「歯磨きをもっと楽しく、もっとおしゃれに」という訴求軸は、Smile aesthetics(美しい口元)への関心が高まるインドZ世代と高い親和性を持っていると考えられます。

プレミアム戦略と「インド基準」の価格設計の共存

PerforaやSalt Oral Careが展開する電動歯ブラシやウォーターピックは、日本円で約2,000〜4,000円と日本の相場と比較して極めて安価です。価格に敏感なインドの消費者に合わせ機能を必要最低限に絞り込み、OEM(受託製造)による大量生産を組み合わせることで実現しています。

日本では「メイドインジャパン」や「自社工場製造」という背景に強い信頼を置く傾向がありますが、インドの消費者にとっては機能的に十分であり、かつ独自性や自分のライフスタイルへの共感を感じるストーリーがあれば品質を高く評価します。この「高付加価値をインド基準で設計する」戦略こそが新興ブランドの急成長の鍵です。

インド市場の全体像|グローバルブランドVSインドローカルブランド

新興ブランドが台頭する一方、インド市場の全体像を俯瞰すると、インド最大手の米系コルゲートは市場の半数を超える圧倒的なシェアを維持し、P&G、ユニリーバ、英系GSK(グラクソ・スミスクライン)を含む上位4社だけで市場全体の約9割を独占している現実があります。

2024年頃から急速にシェアを伸ばしてるコルゲートの新ライン「Colgate Visible/3D White」は、都市若年層向けに洗練されたデザインで打ち出され、インドの大手ECサイト(Nykaa等)でもベストセラーとして根強い人気を誇ります。

この背景には、長年にわたるブランド浸透に加え、100ルピー以下の低価格帯で固める強力な製品群、全土5万拠点を超える膨大な実店舗流通網という基盤があります。コルゲートのCEOは「都市部の消費者の3分の2が経済的ストレスに直面している」という厳しい現状を指摘しており価格帯は重要な購買要因であることを主張しています。

その一方で、水面化では徐々に、限られた予算の中でも「少しでも価値あるもの」へのプチプレミアム志向は確実に進行しています。D2Cブランドが構築した都市部若年層は、経済的ストレス下にあっても「自分を満足させる信頼できる商品」へ投資するというメリハリが出てきています。

彼らは、高い消費ポテンシャルを秘めたインドで成長していく購買層です。新興勢力が切り拓く「質の高いニッチ市場」と外資系大手ブランドが交差するインドのオーラルケア市場はインド全土の所得向上と消費のプレミアムシフトを予感させるダイナミックなフェーズに突入していると言えるでしょう。

India Oral Care Market Share (Illustrative Storytelling View)

Companies

Colgate-Palmolive
P&G (Oral-B)
Unilever (Close-Up)
GSK (Sensodyne)
Dabur/Himalaya/Patanjali (Local Emerging)
Church&Dwight/J&J
D2C Emerging

Graph constructed via storytelling based on the following reports
Mordor Intelligence “India Oral Care Market Size & Share Analysis (2025-2030)”
IMARC Group “India Oral Care Market 2026-2034”
Coherent Market Insights “India D2C BPC Market 2025-2032”

著者

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見上 すぐり

Storytelling LLP 創業者兼CEO

国際的なローカライゼーションの分野で13年以上、デジタルコミュニケーションの分野10年以上の経験を積み、日本ブランドと海外市場をつなぐことに従事。インド・中東チームの多国籍チームとともに、日系企業の海外進出を支援する。

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Nanami Sato

Storytelling LLP 短期インターンシップ

映画・コンテンツIPを中心にPR・デジタルコミュニケーションに携わる。日本発IPの海外展開や映画祭・イベントにおいてPRを軸に関わり、作品の認知向上を支援している。2025年よりインドへ移住し、STORYTELLINGにてプロボノとして活動する。