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本記事ブログでは、インドのビジネスシーンを形成する重要なインフルエンサーマーケティングトレンドを2025年におけるB2B協業の増加、AI駆動インフルエンサーの影響、そしてオーガニックコンテンツとストーリーテリングの重要性について解説します。
2024年、インドにおけるインフルエンサーマーケティング業界の価値は550億ルピー (約9,444億円)に達しました。これは前年対比20%増であり、市場は2026年まで每年25%の年平均成長率 (CAGR) で拡大すると予測されています。さらに、2027年には市場価値が1,070億ルピー(約1兆8,374億円)を超えると予測されています。(Statista調べ)
本記事ブログでは、インドのビジネスシーンを形成する重要なインフルエンサーマーケティングトレンドを2025年におけるB2B協業の増加、AI駆動インフルエンサーの影響、そしてオーガニックコンテンツとストーリーテリングの重要性について解説します。
B2Bでもインフルエンサーマーケティングはトレンド
B2Bにおいても、インフルエンサーマーケティングを活用した施策が増加しており、インフルエンサーとなる業界の専門家との協業を通じて信頼を確立と、ソートリーダーシップによる業界での権威を確立しようとしています。この動きは企業にとって、低コストで情報を得る手段として高く評価されています。
LinkedInの調査によると、インドのB2B購入者の83%が業界インフルエンサーによるショート動画コンテンツを信頼しており、さらに66%が購入決定において動画コンテンツが重要な役割を果たすという調査結果がでています(LinkedIn調べ)。
インドにおけるインフルエンサーマーケティング業界は、年平均成長率(CAGR)25% で成長し、2025年までに6,875億インドルピー(INR) に達すると予測されています。(Statista調べ)この急成長は、B2B分野を含むさまざまな業界でインフルエンサーマーケティング戦略が積極的に採用されていることを示しています。
デジタルインフラの向上
2024年、モバイルデータトラフィックは月間21.5 exabyteに達し、前年比で23%の増加を記録しました(Nokia India調べ)。 2024年の1ユーザーあたりの平均月間データ使用量は27.5GBに達し、過去5年間で年平均成長率(CAGR)19.5%を記録しています(Nokia India調べ)。インドでの5G使用圏も拡大し、データトラフィックは前年比で3倍増、2024年には7.6 exabyte に達しました(Nokia India調べ)。
ソーシャルメディアユーザーの増加
企業の広告予算がデジタルシフト
インドの企業広告予算はデジタルマーケティングへとシフトしつつあります。2025年には、インドの広告市場は前年比7%増の1兆6413億7千万ルピーに達すると予測されており、その成長を主導するのがデジタル広告で、11.5%の成長率が見込まれています(GroupM調べ)。
スマートフォンの普及
インドのスマートフォン市場は、2023年には約32.5兆ルピー(約57.6兆円)規模でした。2024年には約9%成長し、2025年には市場規模が42.9兆ルピー(約76.1兆円)を超えると予測されています。(Counterpoint調べ)
この成長は、プレミアムデバイスの需要拡大や平均販売価格(ASP)の上昇、5G対応端末の普及によって後押しされています。(Counterpoint調べ)
可処分所得の増加や分割払いオプションの普及により、プレミアムモデルがより身近になりました。また、ショート動画コンテンツの需要拡大が、高性能デバイスの必要性をさらに高めています。
5Gの導入と、XiaomiやSamsungなどのブランドによる手頃な価格のデバイスが、インドのスマートフォン普及を後押しし、市場の拡大に寄与しています。
ブランドは、フォロワー数の多さよりも、より深いエンゲージメントを生み出すインフルエンサーを重要視するようになっています。これは、ブランド評価やLTV、企業の最終目的である売上や利益への貢献度が高いことに起因してます。
インドでは、70%の消費者がインフルエンサーの推奨する製品を購入する可能性があると述べており、インフルエンサーの影響力の大きさを示しています(Influencer Report調べ)。
ストーリーテリングの重要性がさらに高まる
インフルエンサーマーケティングにおけるストーリーテリングは、感情的なつながりを生み出し、ブランドの信頼性を高め、より深いオーディエンスエンゲージメントを促進します。
インフルエンサーは、共感性、ビジュアルストーリーテリング、一貫性、ユーザー生成コンテンツなどの手法を活用することで、マーケティングの効果を向上させます。これらの手法を駆使することで、フォロワーの心に響く魅力的なストーリーを生み出すことができます。先述のキャンペーン事例が示すように、ストーリーテリングはマーケティング戦略に革新をもたらし、長期的で強固な消費者との関係を構築する鍵となります。
この重要性から、美容、自動車、テクノロジー、小売など、さまざまな業界の企業がインフルエンサーと協力し、親しみやすく信頼性の高いストーリーテリング型のオーガニックなコンテンツを制作することに注力しています。
ここからは、B2B・B2Cのローカル系、グローバル系ブランドのインフルエンサーマーケティングの事例を取り上げてご紹介していきます。
ケーススタディ:B2Cインド系企業
コスメティックブランド NykaaとDivita Anjesh

インドを代表するビューティーリテーラーであるNykaaは、ビューティーブロガーやメイクアップアーティストとのコラボレーションを通じて、効果的なインフルエンサーマーケティングを展開しています。
これらのインフルエンサーは、スクリプトにとらわれないメイクチュートリアルやスキンケアルーチンを作成し、視聴者に価値ある情報を提供しています。このアプローチにより、Nykaaは単なる広告ではなく、信頼できる美容情報の発信源としての地位を確立しています。
オンラインショッピングブランド MyntraとSimata Paria氏

Myntraはインフルエンサーを活用し、彼らの個人的なファッションストーリーを共有しました。インフルエンサーは、家族のイベントやデートナイトのために選んだ特定のコーディネートと、その背後にある感情的な意味を強調します。
このストーリーテリング手法により、単なる洋服のプロモーションにとどまらず、視聴者との共感や感情的なつながりを生み出すことに成功しました。(Exchange Media調べ)
乳製品ブランド AmulとシェフHeena Vallecha氏

Amulは、インフルエンサーを活用して、Amul製品を取り入れたレシピや、インド人が親しんでいる食文化のストーリーを発信しています。この手法により、製品が日常生活に欠かせない存在として提示され、消費者にとって身近で信頼できるブランドとして認識されるようになります。(Harvard Business Publishing調べ)
Tata MotorsのNano Drive with MTVイニシアチブ

ITコンサルティング WiproとAiyyo Shraddha氏

Wiproは、デジタルトランスフォーメーションから技術革新まで幅広いソリューションを提供する、グローバルなITサービスおよびコンサルティング企業です。
その代表的な事例として、コンテンツクリエイターのAiyyo Shraddhaとのコラボレーションが挙げられます。彼女を起用したキャンペーンでは、Wiproの消費者向け製品「Maxkleen」をユーモアを交えながら紹介し、楽しさと実用性を兼ね備えたコンテンツを展開しました。
法人向けSaaS Zoho とインフルエンサー

Zoho Corporation(ゾーホー・コーポレーション)は、1996年インド発の多国籍テクノロジー企業であり、コンピューターソフトウェアおよびウェブベースの業務支援ツールを専門としています。
戦略的なインフルエンサーマーケティング施策として、ZohoはグローバルインフルエンサーマーケティングエージェンシーであるConfluencr(コンフルエンサー)と連携し、Zoho Workplaceのプロモーションを実施しました。Zoho Workplaceは、メール、ドキュメント管理、コラボレーション機能を統合した業務プラットフォームです。
このキャンペーンでは、ビジネスの効率化や生産性向上に関する洞察力あるコンテンツで知られる若手起業家Ishan Sharma(イシャン・シャルマ)氏を起用しました。

韓国の有名ビューティーブランドであるLaneigeは、インド市場での存在感を高めるために、スキンケアに特化したブランド戦略の一環としてSara Tendulkarをインドのブランドアンバサダーに起用しました。
Sara Tendulkarは、クリケット界のレジェンドSachin Tendulkarの娘であり、影響力のあるソーシャルメディアパーソナリティとして、美容やライフスタイル分野で高い信頼を得ています。
このパートナーシップは、デジタルに精通した若年層をターゲットにしており、Saraの人気と信頼性を活かしてLaneigeのブランド認知度と魅力をさらに高めることを目的としています。
フランス系スポーツブランド Decathlon Indiaのフィットネスインフルエンサー

Decathlonは、インドの大手スポーツ用品企業として、フィットネスインフルエンサーと提携し、彼らのコンテンツ内で自然にDecathlon製品を紹介しています。
インフルエンサーが日常のワークアウトルーティンの中で製品を使用することで、コンテンツがよりリアルで親しみやすいものとなり、Decathlonの「すべての人にスポーツを」というミッションと一致しています(LinkedIn調べ)。
日系インテリアブランドNitori India とライフスタイル系インフルエンサー

Nitori Indiaは、家具・ホームグッズを展開する企業であり、2024年12月にインド初の店舗をムンバイにオープンしました。Nitoriのインド市場参入は、店舗の開業や戦略的な立地によって注目を集めており、さらにインフルエンサーを活用することでブランド認知度を高めています。
インフルエンサーを通じて、Nitori製品の美的価値や機能性を強調することで、特にホームデコレーションやインテリアデザインに関心のある層に訴求し、インド市場におけるブランドの魅力を一層高めています。
日系ファッションブランド Uniqlo IndiaとIshita Saluja氏

Uniqlo Indiaは、日本発のグローバルアパレルブランドとして、2019年10月4日にインド市場へ進出しました。2023年10月、ムンバイ初の店舗オープンに合わせてインフルエンサーマーケティングをし始めました。ブランド認知度を高め、インド市場での存在感を確立するために、インフルエンサーマーケティングを戦略の重要な要素として活用しています。
同ブランドは、ファッションインフルエンサーやライフスタイル系コンテンツクリエイターとコラボし、Uniqloのスタイリッシュでありながら手頃な価格の衣類をさまざまなシーンで紹介しています。特に、リアルで共感性の高いコンテンツ作りに注力しており、ファッションに敏感なミレニアル世代やZ世代に強い影響力を持つインフルエンサーを活用しています。
これらのインフルエンサーは、ブランドの製品を使用した個人的な体験を共有し、快適さ、汎用性、デザインの魅力を強調することで、高品質で機能的なファッションを求めるインドの消費者に響くコンテンツを発信しています。(LinkedIn調べ)
LenovoとGaurav Chaudhary氏

Lenovo Indiaは YouTubeチャンネル「Technical Guruji」のGaurav Chaudharyなどのテック系インフルエンサーと提携し、ビジネス利用のLenovo ThinkPadやワークステーションを紹介しています。
このキャンペーンにより、ビジネスプロフェッショナル向けの認知度が向上しました。
ITクラウドソリューションMicrosoft India と AI Azure インフルエンサー・デイ・シリーズ

2024年、マイクロソフトはインドの10都市で「Azure AI Influencers Day Series」を開催しました。このイベントでは、マイクロソフトのMost Valuable Professional(MVP)やMicrosoft Learn Student Ambassadors(MLSA)が集まり、Azure AIに関するセッションを通じて、協力と知識の共有を促進しました。この取り組みでは、AI技術とクラウドソリューションに対する理解を深め、業界内でのデジタルトランスフォーメーションを推進することを目的としていました。
インドにおけるAIインフルエンサーのトレンドは、2022年初頭に始まりました。Iインフルエンサーは、インドのデジタルマーケティングの領域を革新し、ブランドにとって新たな形のオーディエンス・エンゲージメント手法を提供しています。
バーチャルインフルエンサーは、AI技術と人間らしい個性を融合させることで、商品プロモーションやブランドエンゲージメントを強化しています。インド初のAIインフルエンサーKyraをはじめ、Lil MiquelaやRaeなどのバーチャルキャラクターが、さまざまなブランドとコラボし、影響力を拡大しています。
これらのバーチャルインフルエンサーは、AIとCGI技術を駆使し、フォロワーとの交流、コンテンツ制作、商品のプロモーションを人間のインフルエンサーの制約なしに行うことができます。
一貫性があり、スケーラブルで、ブランドごとにカスタマイズされたコンテンツを作成できる点から、特にファッション、テクノロジー、ライフスタイル業界で注目されています。
Kyra

Kyraは、FUTR Studiosによって生み出されたインド初のバーチャルインフルエンサーで、デジタル空間で急速に人気を獲得しています。
彼女はファッションやライフスタイルを中心に、Amazon Prime Video、boAt、John Jacobsなどのブランドとコラボレーションを行っています。特に、boAtとのデビューキャンペーンでは、Instagramで200万回以上、YouTubeで100万回以上の視聴を記録し、デジタル領域における影響力の大きさを示しました。(The Print調べ)
一貫したコンテンツ制作能力と、高いエンゲージメント力を持つKyraは、テクノロジーに敏感な若年層へ強く訴求し、インドのデジタル市場におけるバーチャルインフルエンサーの可能性を広げています。
Lil Miquela

Lil Miquelaは、2016年にBrudによって生み出されたバーチャルインフルエンサーであり、Instagramのフォロワー数は250万人以上にのぼります。
彼女はCalvin KleinやPradaといったブランドとコラボレーションを行っており、これらのブランドはインド市場でも強い影響力を持っています。Lil Miquelaとのパートナーシップは、グローバル市場だけでなく、インド市場へのブランド認知度向上にも貢献しています。(Channeliam調べ)
Lil Miquelaの影響力は世界中に広がっており、特にグローバルファッションブランドとのコラボレーションを通じて、インドのデジタルマーケティング市場にも存在感を示しています。
彼女のコンテンツは、パーソナルストーリーテリングとプロダクトプレースメントを融合させたものであり、彼女自身の「ライフスタイル」を発信する形で、若年層やデジタルネイティブな消費者に共感を呼んでいます。このライフスタイルとラグジュアリーファッションの組み合わせにより、スポンサーコンテンツを自然にストーリーに溶け込ませることができ、従来の広告とは異なるアプローチでブランドメッセージを伝えています。
Rae

Raeは、B2B向けのAI生成バーチャルインフルエンサーであり、テクノロジーブランドとのコラボレーションで知られています。彼女は、未来的でデジタルなパーソナリティを活かし、革新的で最先端のプロダクトを紹介することで、インフルエンサーマーケティングの新たな可能性を切り開いています。
SamsungやGoogleといった企業と提携し、テクノロジーに特化したコンテンツでオーディエンスとエンゲージメントを築いてきました。インド市場での具体的なコラボレーション事例は限られていますが、彼女のグローバルな影響力は、テクノロジー業界におけるバーチャルインフルエンサーの重要性を示しています。
Raeの特徴は、ハイテク製品を魅力的で親しみやすい形で紹介することにあります。彼女のバーチャル・パーソナリティを活かすことで、ブランドはターゲット市場に向けたキャンペーンを効果的に展開でき、ストーリーテリングを取り入れたコンテンツと先端技術の融合により、テクノロジー愛好家に訴求することが可能となります。
インドのインフルエンサーマーケティングは急成長しているものの、いくつかの課題も抱えています。
- 信頼性の維持: 過度なプロモーションや透明性の欠如は、消費者の信頼を損なう可能性があります。
- ROI(投資対効果)の測定: エンゲージメントを直接的な売上を計測する手法がないため、ROIの測定が難しい。
- 市場の飽和: インフルエンサーの数が増加し、日々新しいインフルエンサーが誕生するため、ブランドが適切なインフルエンサーを見つけることが困難になっている。
- 規制の遵守: ASCI(Advertising Standards Council of India)のガイドラインにより、インフルエンサーは有償パートナーシップを明示する必要があり、オーガニックなイメージを保ったキャンペーンの手法の難易度が上がっている。
- コンテンツの一貫性と創造性のバランス: ブランドのメッセージを統一しつつ、インフルエンサーの個性や創造性を制限しないバランスが双方にとって難しく、特にブランドガイドラインが厳しいグローバルブランドにとってはチャレンジになっている。
- フェイクフォロワーとボットの問題: フォロワー、インプレッション、エンゲージ面とさえも購入が可能となっており、本物のインパクトを生み出せるインフルエンサーを特定することが難しくなっている。(Buzzfame調べ)
インドの企業ブランドは、ブランド認知度の向上、信頼性の確立、オーディエンスエンゲージメントを強化するために、インフルエンサーマーケティングを積極的に取り入れています。
一方で、ブランドは、本質的でエンゲージメントの高いコンテンツを生み出せるインフルエンサーを見つけ出し、活用することはますます難しくなり課題となっています。
本物のエンゲージメント、ストーリーテリングによるオーガニックなメッセージ、文化的な適応力はインド市場において重要な要素となります。
ブランドとインフルエンサーの価値観が一致し、ターゲットオーディエンスに共感を生む戦略的パートナーシップが、引き続き効果的なインフルエンサーマーケティングの鍵となるでしょう。
一方で、ROIの測定、規制の遵守、市場の飽和といった課題も依然として存在します。しかし、こうした課題に適応し、インフルエンサーとの信頼関係を築くブランドは、インドの競争が激しいデジタル市場で成功を収めることができるでしょう。