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デジタルマーケティングの施策で、今も昔も変わらず重視されているのがSEO(検索エンジン最適化)。グローバルでも、SEOサービス市場規模は年率17.6%で成長しており、2030年には2,348億米ドルに達するといわれています。
ググるが人々の生活、ビジネスにおいても基本動作となっている日本と比較すると、インドは「調べる前に誰かに聞く」が主流。しかし、パンデミックを契機に、検索エンジンを日常使いするユーザーが増えています。
デジタル・ネイティブのZ世代においては、広告よりも検索エンジン経由で得る情報やページの方が信頼できると考る人も少なくなく、SEO対策はインドにおいても主要なデジタルマーケティング施策の一つとなってきています。
ここでは、インドSEOのトレンドと、インドでSEO対策のエージェントを選定する時に注意していただきたいポイントをご紹介します。
自社ウェブサイトを優良サイトとして評価されるために実施する基本施策は適切なコンテンツやキーワードの選定やサイトスピード、被リンクの獲得など日本もインドも大きく変わりません。
しかし、人口のほとんどが日本語で検索する日本と、多言語国家のインドでは、そのSEO施策やトレンドにも特徴があります。
また、インドではデジタルプラットフォームの使用割合はSNSが圧倒的に高いものの、2023年に世界最大人口となった大国では、日本のおよそ6倍のサーチボリュームが存在し、キーワードにおける平均トラフィックは3倍であり、SEOの難易度は日本と比較して高いです。
この競争性の高いインドにおいて、優良なサイトと評価され、上位表示を獲得していくためにはどのような施策が必要なのでしょうか。ここからはインド特有のSEOトレンドについてご紹介していきます。
日本と比較すると、インドでは、英語話者がおよそ1.4億人(全土10%)を占め、都市部のビジネスにおいては主要なコミュニケーション言語でもあるため、英語でのSEO難易度は高いです。
さらには、その他の言語に含まれる各エリアがもつローカル言語(ヒンディー語、ベンガル語、マラーティー語など)においてもSEO難易度は高く、多言語国家ならではの特性が見られます。
そして、インドでは近年新たなトレンドが起きており、2017年以降、英語検索をするユーザーが減少傾向にあります。CSAの「Can’t Read Won’t Buy」調査によれば、インドのインターネットユーザーの68%が、英語よりも現地語のデジタルコンテンツの方が信頼できると回答しています。
トレンド2 | ローカルSEO
インドでは州や地域によって、異なる気候、言語、嗜好、消費行動があります。つまり、人々が抱える課題も異なり、検索キーワードにも地域差が生まれます。特定の地域を効果的にターゲットにするには、使用言語をローカライズするにとどまらず、地元の文化背景を理解した検索キーワードの選定など、ローカルSEOが必要になります。
ローカライズされたコンテンツ、キーワード、ビジネス情報は、特定の地域で製品やサービスを探している地元ユーザーの間で有益であるため、近年、ローカルキーワードを使った検索数が増加している傾向があります。
このようなユーザーのニーズに応えるべく、Googleを含む検索エンジンは、ユーザーの所在地に基づいて関連性の高い検索結果を提供することを優先しています。
インド人の識字率は77.7%といわれています。一部のインド人は、英語を流暢に話すにも関わらず、読み書きが苦手な方に遭遇することは多々あります。
さらに、12個の母音と36個の子音を持つヒンディー語は、スマートフォンのキーボードで適切に入力することが難しく、加えて農村部などで使われるマイナー言語にも独自の文字が存在します。インドに存在する全ての言語に対応したキーボードはモバイルにはありません。
こうした多言語環境も後押しとなり、インドでは音声検索が年率270%で成長しトレンドとなっています。
Google Assistantは、9つの主要なインド系言語をサポートしており、インドのSEO戦略に音声検索を取り入れることは容易になり、インドで人気のあるライドシェアアプリのOlaやフードデリバリーサービスのZomatoは、独自の音声アシスタントを構築し、インド人ユーザーのニーズに応え評価されています。
トレンド4 | 被リンク対応
被リンク対応とは、自社のウェブサイトのリンクを他プラットフォームに掲載することを指します。
NP Digitalが選んだキーワードでヒットする、両国の10~20サイトの被リンクを分析しました。大規模なオンライン市場を保有するが故に、SEO難易度が最も高いとされるアメリカと比較すればその差は一目瞭然ですが、日本とインドの間には平均被リンク獲得数にそれほど差がないことがわかります。
しかしながら、弊社が実際にクライアントのSEO競合調査を実施する中で、日本とインドの被リンクの質の差があることに示唆を得ました。
一部のインドのエージェンシーではSEOをテクニカルに実施することが重視されており、被リンクの質の高さには注力していない傾向が見て取れることから、エージェントのSEOに対する倫理観は日本とインドで少し異なるフェーズにいるように感じます。
例えば、日本語と英語で「SEO 被リンク」「india backlink SEO」と検索した際に表示される内容は特徴的です。日本語サイトでは、被リンク獲得の戦略的な活用方法や、被リンクを乱用することによる自社サイトへの影響が表示される一方で、インドでは、被リンク購入サイトの広告が上位表示されます。
今後さらに高度化するGoogleのサイト評価に対応するためには、質の高い被リンク獲得がトレンドとなるかは、確認しておきたいポイントです。
トレンド5 | モバイルSEO対策
パンデミックを契機に、オンライン学習のために10代以下も個人のデバイスを持つ家庭も増えたインドでは、都市部から農村部までインターネットユーザー数は増加傾向にあり、モバイルインターネット利用率は世界平均を24.7%上回り、2040年には15億人以上に拡大すると予測されています。デスクトップの利用率が26%に過ぎないのに対しモバイルの利用率が74%と、モバイル優位の環境であることも特徴的です。デスクトップ保有率が低く、モバイル保有率が高いインドにおいては、モバイルSEOは重要です。
B2Bビジネスにおいても、これは同様です。STORYTELLINGが支援しているB2B企業様の例をとっても、7〜8割のユーザーがモバイルユーザーであり、これもインドの特徴といえます。
トレンド6 | サイトスピード最適化
インドでは、安定したインターネットにアクセスできるのは都市部で85%、農村部では16%と地域格差が存在するのが現状です。
また、モバイルユーザーは通常、データプランに制限があり、固定ブロードバンド接続に比べてインターネット速度が遅い傾向にあります。
このような背景から、サイトスピードを最適化していくことで、モバイルユーザーの離脱を防ぎ、ユーザー体験の向上を目指すことが求められています。ユーザー体験の向上は、滞在時間やコンバージョンにも反映され、結果的に検索エンジンに高評価を得る要素の一つとなります。
さらには、オフラインで閲覧できるオプションがあれば、不安定な環境に居住する膨大なインドユーザーにコンテンツを届けることが可能です。事実、NetflixとGoogleの両社は、低接続率に対応したサービスを提供しています。
インドSEO、知っておくと便利な基本用語
ここからは、グローバルで取り入れられているSEOの基本施策を3つのキーワードでご紹介します。インドでは、米国発のSEO用語が一般的に使用されており、エージェントやデジタルマーケティング担当者と対話する場合には、これらの用語を押さえておくと、コミュニケーションがスムーズになります。
「What Is Off-Page SEO? A Guide to Off-Page SEO Strategy」より参照、自社で翻訳・作図
On-page SEO
On-page SEOは、サイト運営者が自社サイト上で直接実践できるSEOを指します。
- コンテンツの質
- タイトルタグ
- キーワードの選定・使い方
- URL(URLにキーワードを入れる)
- 内部リンク など
Off-page SEO
Off-page SEOとは、自社ウェブサイト外で実施するSEOを指しています。第三者となる外部サイトに自社のコンテンツやリンクが引用されていることで自社ウェブサイトの評価、信頼を実証します。
- 被リンク
- コンテンツマーケティング
- SNS
- ポッドキャスト など
Technical SEO
Technical SEOとは、サイトの内容を検索エンジンに適切に伝えるために内部構造を最適化する施策です。 検索エンジンにWebサイトをより早くクロールしてもらうことで、最短距離でSEO評価を得ることができます。
- サイトスピード
- 構造データ
- 重複URLの正規化
- XMLサイトマップ など
検索エンジンが求めている上記の3つの柱と、ローカルトレンドを理解した上で、戦略的なSEOを実施する企業が、ランキング上位を獲得できていることはインドでも同様です。
インドSEOエージェント選定の注意点
「IT大国」と呼ばれるように、インドには優秀で豊富なIT人材が存在しています。SEO対策を提供するエージェントも星の数ほど存在し、パッケージや価格帯もさまざまです。選択肢が多いが故に、エージェント選定はインド進出を果たした日系企業様が頭を抱える仕事の一つにもなっているように感じます。
ここでは、STORYTELLINGがクライアント様からヒアリングした課題内容をもとに、低価格帯インドエージェントと高価格帯インドエージェントのメリットとデメリットをご紹介します。それぞれの特性とトレンドを理解し、企業の成長フェーズに合わせたエージェント選定にお役立てください。
低価格帯インドエージェント
価格レンジは月額20,000ルピー(約34,000円)からスタートするエージェンシーもあり、スコープやSEOの目的や質によって費用が変動します。
メリット
- 初期投資が少なく、継続しやすい(SEOは長期的な継続が求められるため、費用の負担感を感じないことは大きい)
デメリット
- 戦略や質にはこだわらないため、質の低いオフサイトSEO施策を実施している傾向があるデジタル認知度(露出度)は高まるが、認知拡大にとどまり、売上に繋がるターゲットへのアプローチかは定かでない(セールスコンバージョンが低い)
- レポートではなくファクトシートに留まる傾向にある。仮説検証や、改善案などはあまり期待できない
高価格帯インドエージェント
月額100,000 ルピー(約17万円)以上で、課題解決型の戦略的なサービスを展開するエージェンシーもあります。
メリット
- 現状把握、課題を抽出し、カスタマイズしたSEO対策の提案がある
- 顧客のマーケティング戦略の目標に沿った長期的な戦略の提案があり、ブランド価値を高めることを考慮した質の高いSEOを実施する
デメリット
- 短期的なROIが出にくい
- SEOは成果が出るまでに6ヶ月程度かかるため、ランニングコストへの負担感を感じたる
サマリー
SEOはデジタル認知度を獲得する上では、検索エンジンが発表するアルゴリズムを無視せず、長期的に質の高い施策を実施していくことが成功への最短距離です。
多言語対応や音声検索対応は、日本をベースに事業を行う企業様にとっては馴染みのない施策ではありますが、インド特有の文化背景を理解した上のローカルSEOを実施することで、届けたい層へ的確に届けていくことが可能です。
次回は、インドでSEO対策を始める手順、そしてKPI指標についてご紹介していきます。
Marina Ogino
2019年、獨協大学経済学部卒業。在学中、チュラロンコン大学に一年間留学しタイ語を習得。タイの動画制作会社と農業ベンチャーでインターンシップを経て、株式会社日本農業に入社。海外営業部に所属し、駐在中は事務所の立ち上げ、営業・マーケティングを担当。2022年1月からインドに移住し、同年6月STORYTELLING LLPにGMとして入社。日本語、タイ語、英語話者。