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インドのメガネ市場が急成長する3つの理由|日本企業が勝てる5つの戦略

なぜ今、インドのメガネ市場なのか

インドのメガネ市場は、消費財カテゴリーの中でも特に高い成長率を見せています。市場規模は2024年時点で約104億ドル(約1.5兆円)。2033年には196億ドル規模に到達し、2025〜2033年の年平均成長率(CAGR)は6.94%と予測されています(IMARC Group)。

別の調査会社では、より高い成長率を示すデータもあります。Custom Market Insightsは2033年の市場規模を119億ドル、CAGR 11.93%と予測。Maximize Market Researchは2030年までにCAGR 11.90%、Coherent Market Insightsはメガネ(眼鏡)セグメントに限定して2033年までにCAGR 11.6%と予測しています。Grand View Researchによれば、アジア太平洋地域全体でも2025〜2030年のCAGRは10%超で、その中でもインドは中国・日本と並んで成長の中心です。

なぜこの市場がこれほど注目されるのか。その背景には、構造的な3つの理由があります。

なぜインドでメガネ市場が伸びているのか

理由1:実利的な需要が爆発している

最も大きな成長ドライバーは、純粋に「メガネをかけなければならない人」が急増しているという事実です。

インド保健・家族福祉省のデータによれば、インド人口の約11.9%が近視(myopia)を抱えており、生活様式の変化により有病率は上昇傾向にあります。Titan Eye+が2024年の子供の日に実施した3万人規模の検眼スクリーニングでは、近視と関連視力課題の発生率が約33%という結果が出ています。子供のうちの3人に1人が、何らかの視力課題を抱えている状態です。

要因として広く指摘されているのは、以下の3点です。

  • スクリーンタイムの急増:2024年時点でインド人の平均スクリーンタイムは1日約4.3時間
  • 都市化と空気汚染:屋外時間の減少、PM2.5や粉塵による眼への負荷
  • 食生活の変化:栄養バランスの偏りが眼疾患の進行に影響

加えて、高齢者人口の増加に伴う老眼(プレスビオピア)需要、デジタル眼精疲労(Digital Eye Strain)対策としてのブルーライトカットレンズ需要も顕著です。要するに、メガネはもはや「あれば便利」ではなく「ないと困る」ものに移行しつつあります。

理由2:ファッションアイテムとしての地位確立

第二の成長ドライバーは、メガネがファッションアクセサリーとして定着しつつあることです。

インドの高級メガネ市場は、2024年に約8億9100万ドル規模、2030年には17億2100万ドルへ拡大予測(CAGR 11.72%)です。サングラスはこのうち約67%を占めており、UV保護というシリアスな機能性と、ステータスシンボルとしての象徴性が両立する商品となっています。

2023年時点でインドの富裕層(HNWI)は約358万9000人、前年比12.2%増。SNSインフルエンサー、Bollywoodセレブリティ、クリケット選手による起用が、メガネ・サングラスの消費を押し上げています。Ray-Ban、Gucci、Bvlgari、Fendi、Prada、Armani、Versaceなどの国際ブランドがインド市場で本格展開を進めている背景には、このトレンドがあります。

理由3:組織化された流通網の整備

実は、伸びている本当の理由はこの3つ目にあると考えています。市場としては伸びるけど、買えない、買いたくないという状態だったインドが、メガネを「気軽に買える」状態になりつつあるという変化です。

歴史的にインドのメガネ市場の約90%は「地元の眼鏡店(unorganized sector)」が占めていました。透明性のない価格、品質保証の不足、専門知識を持たない販売員という構造が、消費者に「メガネは不安な買い物」という印象を植え付けていました。フレームの原価300ルピーのメガネが3,000ルピーで売られている、という構造が当たり前だったのです。

ところが2007年のTitan Eye+の登場、そして2010年のLenskart創業以降、業界は急速にオーガナイズドリテール(組織化された小売)へとシフトしました。Lenskartは2025年9月時点で全世界2,949店舗(うちインド2,270店舗)を展開し、デジタル販売の45%がAI推奨経由になっています。価格の標準化、AR/3D試着、ロボット製造などの導入により、メガネ購入のハードルが大幅に下がっています。

インド市場の主要プレイヤー4タイプ

それぞれを実際の企業事例で見ていきます。

タイプ1:垂直統合・大量出店モデル—Lenskart(レンズカート)

インド レンズカート メガネ

参考元:Lenskart webサイト

日本のOWNDAYSを2022年に約4億ドルで買収したインド企業として、日本でも知る人ぞ知るメガブランドです。2025年10月にはインド上場を果たし、主要都市のみならず、小規模都市でも存在感のあるブランドへと成長しています。

創業:2010年|本社:グルガオン

コンセプト:「テック × リテール × トラスト」による組織化された大衆向けメガネ提供

メインターゲット:ミレニアル世代・Z世代(売上の70%)

販売モデル:D2C ECスタート → COCO(直営)/FOFO(フランチャイズ)/COFO(コフランチャイズ)のハイブリッド型オムニチャネル

展開エリア:300以上の都市、Tier 1〜Tier 4まで全国展開

価格帯:1,000ルピー〜5,000ルピー中心

特徴:

  • ラジャスタン州ビワディに自社製造工場(年間5,000万本の生産能力)
  • 自社設計+自社製造+自社流通による「4〜5階層のマージン取り込み」
  • AR/3D仮想試着(2024年度に3,860万回利用)
  • 自宅検眼サービス(FY25に1,300万件実施)
  • 1,500万件以上のインド人・アジア人の顔形状データベース
  • ロボット技術による小数点以下3桁精度のレンズ加工
  • 2025年10月にIPO、時価総額約79億ドル
  • スペインのMellerも2025年に4,000万ユーロで買収

タイプ2:D2Cスタートアップ—Birch Posh(バーチポッシュ)

インド Birch Posh メガネ

デリーNCRを拠点とするデザイナー系ラグジュアリーサングラスのD2Cブランドです。SNS発の若年層支持を起点に、Birch Posh Globalを通じた海外展開も進めるなど、「Lenskartでは買わない層」を狙う差別化型スタートアップの代表例です。 

創業:2015年前後(オンライン中心)|本社:デリーNCR

コンセプト:デザイナー系ラグジュアリーサングラス・アイウェアブランド

メインターゲット:ファッション感度の高い都市部の若年層・コミューター層

販売モデル:D2C ECメイン(自社サイト+Amazon併用)、グローバルEC展開

展開エリア:オンライン全国+Birch Posh Globalによる海外展開

価格帯:1,499〜8,850ルピー(中間ラグジュアリー帯)

特徴:

  • UV400保護、ポラライズドレンズなど機能性
  • デザイナーケース・スマホケースなどライフスタイル拡張
  • Heritage、Designer、Men’s、Women’sなどキュレーション型コレクション
  • SNS・インフルエンサー起点のブランド構築

インドにはこのようなD2Cアイウェアスタートアップが71社存在し、国別では米国(160社)、英国(65社)に次ぐ世界3位の規模です(Tracxn、2026年4月時点)。Lenskartが大衆向け実用市場を押さえる一方で、Birch Poshのようなブランドは「Lenskartでは買わない層」を狙う差別化戦略を取っています。

タイプ3:地域特化型小売チェーン—Specsmakers(スペックスメーカーズ)

インド メガネ Specsmaker

「インド第3位のメガネブランド」を自認する、南インド最大の地域特化型チェーンです。チェンナイを本拠地に5州60都市以上で290店舗を展開し、3年以内に600店舗への倍増を目指しています。Lenskartの全国展開とは対照的に、深いペネトレーションで南インドの実質的なリーダーポジションを獲得しています。

 

創業:2007年|本社:チェンナイ

コンセプト:「Eyewear Expert」高品質を手頃な価格で

メインターゲット:南インドの中間所得層〜上中間層

販売モデル:オフライン直営+フランチャイズ中心、Shopifyによるオムニチャネル

展開エリア:タミルナードゥ、カルナタカ、アーンドラ・プラデーシュ、テランガナ、ケーララの5州・60都市以上

価格帯:1,500〜6,000ルピー中心

 

特徴:

  • 290店舗以上(2025年時点、3年以内に600店舗を目標)
  • 累計1,000万人以上の顧客実績、3,000以上のSKU
  • 自社デザイン・製造・調達でミドルマンを排除
  • 各店舗に有資格オプトメトリストを配置
  • ロボティクスを活用したカスタムフィットレンズ加工
  • 1.82億ドルの調達実績

タイプ4:レガシーオーガナイズドリテール—Titan Eye+(タイタンアイプラス)

インド Titaneye

インド最大の財閥Tata Group傘下のメガネ事業として2007年にスタートしました。「Tata Trust」という圧倒的なブランド資産を武器に、unorganized sectorが約90%を占めていた当時のインド市場を組織化に導いた最初の本格プレイヤーです。Ray-Ban Meta AIスマートグラスのインド主要小売パートナーでもあります。

 

創業:2007年|本社:バンガロール(Tata Group)

コンセプト:「Tata Trust」を基盤としたヘルスケア+ファッションのプレミアム小売

メインターゲット:信頼性を重視する中産階級〜アッパーミドル層、最近は子供・10代も注力

販売モデル:直営+フランチャイズのフィジカル中心、Tata Neu/Tata Cliq/Amazon/Flipkart併用、クイックコマースも検討中

展開エリア:900店舗超、384都市以上で全国展開

価格帯:2,000〜25,000ルピー(プレミアム帯まで対応)

 

特徴:

  • Tata Groupのブランド資産(信頼性)
  • 標準化された検眼プロセス、エアコン完備のショールーム、透明な価格設定
  • ドイツ製レンズなど国際品質ベンチマーク
  • 木材・チタンを採用した「Runway」プレミアム店舗フォーマット
  • Ray-Ban Meta AIスマートグラスのインドにおける主要小売パートナー
  • 自社AIアシスタント「OptoMate Bot」(精度99.8%)
  • FY26 Q3売上前年比16%増、FY26年間売上900億ルピー超予測
  • 「Profitable Precision(収益性ある精密性)」戦略:30の不採算店舗を閉鎖して高採算店に集約、EBIT率約10%

タイプ5:外資系プレミアム/ラグジュアリー—Ray-Ban(レイバン/EssilorLuxottica)

Rayban India メガネ
時価総額1,120億ユーロの世界最大のメガネ複合企業EssilorLuxottica傘下のフラッグシップブランドです。90年近い歴史を持つWayfarer・Aviatorなどアイコニックな商品ラインで、インドの富裕層に強い支持を持ちます。2025年5月にはRay-Ban Meta AIスマートグラスをインド市場で本格ローンチし、ウェアラブルの新領域でも先行しています。 親会社:EssilorLuxottica(仏・伊)|創業:1936年 コンセプト:アイコニックなアイウェアブランドとしてのプレミアム体験 メインターゲット:アッパーミドル層〜富裕層、特に20〜40代の都市部消費者 販売モデル:ディストリビューター+直営+D2C ECのマルチチャネル(サードパーティECモール、リテールパートナー、自社ブランドストア、公式ECサイトのフル展開) 展開エリア:主要メトロ+オンライン全国 価格帯:5,000〜30,000ルピー(ラグジュアリー帯) 特徴:
  • EssilorLuxotticaグループの中核ブランド(2024年売上の約12%を占める)
  • 2025年5月にRay-Ban Meta AIスマートグラスをインド市場で本格ローンチ
  • 製造はイタリアの自社工場で品質管理
  • Wayfarer、Aviatorなどアイコニックな商品ライン
  • カウンターフェイト(偽造品)対策の徹底(MAP価格規制、公式ECサイト化)
EssilorLuxotticaは2018年に世界一の眼鏡フレームメーカー(Luxottica)と世界一の眼鏡レンズメーカー(Essilor)が合併して誕生し、グローバル市場の14%+41%という市場支配力を持ちます。インドでは2024年にReliance RetailがLensCraftersを取得するなど、現地企業との連携も進んでいます。 これらのプレイヤーを横並びで見ると、それぞれが異なる戦略軸で勝負していることが分かります。
Lenskart Birch Posh Specsmakers Titan Eye+ Ray-Ban
ポジショニング テック×大衆×全国 デザイン×ラグジュアリー×D2C 地域密着×手頃価格 信頼×プレミアム×ヘルスケア アイコニック×グローバル
主戦場 全国(Tier 1〜4) オンライン+海外 南インド5州 全国(384都市) 大都市+オンライン
販売モデル ECスタート→COCO/FOFOハイブリッド D2C ECメイン オフライン直営+フランチャイズ 直営+フランチャイズ ディストリビューター+D2C
製造モデル 自社工場(年5,000万本) OEM 自社設計・製造 輸入60%+自社 伊・自社工場
競争優位 スケール+顔データ デザイン×ブランド 地域の深さと効率 Tata信頼+体験 アイコン+技術

日本企業の勝ち筋。5つの戦略軸

ここまで見てきたように、インド市場には既に強力なプレイヤーが存在します。Lenskartが大衆市場を押さえ、Titan Eye+が信頼を、Ray-Banがアイコンを、Specsmakersが地域を握っています。

では、日本企業に勝ち筋はあるのか。生活者そして、インド市場でメガネ市場の変化を見てきたマーケータの一人として両方の視点から、5つの戦略軸で十分に勝てる余地があると見ています。

勝ち筋1:圧倒的な精密フィッティング技術

インドの既存プレイヤーが最も弱い領域の一つが、フィッティング技術です。Lenskartの店舗ですら、サイズ調整は「フレームをかけて違和感がないか確認する」レベルにとどまることが多いのが実態です。鼻パッドの曲げ、テンプル(つる)の角度調整、耳掛けカーブの個別調整といった、日本の眼鏡店では当たり前に行われる工程が、インドではほとんど存在しません。

日本のメガネは、福井県鯖江市が日本の眼鏡フレーム生産の約96%を担うことに象徴されるように、170社以上が分業して一つのフレームを作る世界最高水準のクラスター産業です。1981年に世界で初めてチタンフレームを実用化したのも鯖江でした。ベータチタンを使ったフレームは、数千回かけても元の形状に戻る精度を持ち、フィッターによる微調整を前提に設計されています。

JINSの米国市場戦略では、デジタル試着システムによって従来20〜30分かかっていたコンサルテーションを5分以下に短縮しつつ、店舗ではフィットアドバイスを丁寧に行う、というハイブリッドモデルを取っています。これはインドでもそのまま転用可能です。「メガネは安いけど合っていない」という不満が広がっているインド市場で、「日本品質のフィッティング」は明確な差別化軸になります。

勝ち筋2:グラスの精度調整(光学精度)

「フィッティング」がフレームと顔の物理的な相性を整える技術なら、「グラスの精度調整」はレンズそのものの加工と位置決めの精度です。両者は別領域の技術で、どちらか一方を解決してもメガネは「合わない」状態のままです。インドではこの後者の領域こそ、構造的に最も精度が低いまま放置されています。

レンズの光学精度を決める主な要素は、瞳孔間距離(PD)の測定、レンズの光学中心とユーザーの瞳孔位置の合致、乱視軸の正確な合わせ、累進レンズのアイポイント位置決めの4つです。日本の眼鏡店では、PDは片眼ごとに0.5mm単位で測定し、フレームをかけた状態でのフィッティング高さも含めてレンズ加工指示書を作るのが標準です。一方インドのunorganized sector(市場の約半分以上)では、PDは「両眼合計」を定規で測るレベル、乱視軸は処方箋の数値をそのまま転記するだけ、というケースが珍しくありません。

Lenskartは「ロボット技術による小数点以下3桁精度のレンズ加工」を訴求していますが、これはあくまで「加工」の精度です。加工”前”の測定(PD・光学中心・累進アイポイント)の精度については、店舗オペレーターのスキルに依存する人的工程のままです。どれだけロボットの加工精度が高くても、入力データであるPDが2〜3mmずれていれば、結果のメガネはずれたままになります。「頭痛がする」「長時間かけていられない」というインドの消費者の不満の多くは、フレームのフィッティングではなく、この光学精度の不足に起因しています。

日本の眼鏡店では、強度近視・乱視・累進レンズなど複雑な処方ほど、測定の精度が結果を左右することが共有された前提として運用されています。インドではこの領域に注力するブランドがほぼ存在せず、「Lenskartは安いけど目が疲れる」と感じる消費者は確実に増えています。日本式の光学精度測定を体験できる店舗・サービスは、価格帯を多少上げてもプレミアム層・複雑な処方を持つ層に十分に届く差別化軸になります。

勝ち筋3:価格透明性と「コミコミ価格」モデル

インドのメガネ市場で意外と消費者の不満が大きいのは、価格の不透明さです。フレーム価格、レンズ価格、コーティング、UV保護、ブルーライトカット——オプションが積み上がって、最終的にいくら払うのかが見えにくい。

日本の主要メガネチェーンが採用する「コミコミ価格」モデル(JINSは¥6,600/¥9,900/¥13,900の3価格帯、Zoff・OWNDAYSも同様)は、この問題を構造的に解決しています。OWNDAYSがインド進出時に「20分でレンズ加工が完了し、レンズ込みのシンプル価格」を訴求してきた背景もここにあります。実際、Lenskartが2022年にOWNDAYSを約4億ドルで買収した最大の理由も、このオペレーションモデルの優秀さでした。

さらに重要な事実があります。日本のメガネは欧米・他のアジア諸国と比べて30〜50%安いという価格優位性を持っています。インドの平均的なメガネ価格(フレーム+レンズ)は、JINSやZoffの日本価格よりも実は高いケースも多いのです。「日本品質を日本価格で」というポジショニングは、十分にインド市場で成立します。

勝ち筋4:日本デザイン×インド適応のブランドストーリー

サングラスを中心としたインドの高級アイウェア市場は2030年に約17億ドルへ拡大します。この市場では、欧州のラグジュアリー(Ray-Ban、Gucci、Prada)が支配的ですが、Japanese aestheticやミニマリズム、クラフトマンシップというアジア由来の価値観を求める消費者層も確実に存在しています。

OWNDAYSが「Simple Pricing, Quick Servicing, Value」というコンセプトで自前展開した実績、Masunaga、Kaneko Optical、999.9(Four Nines)、KIO YAMATO、YUICHI TOYAMAといった日本ブランドが世界のニッチ市場で評価されている事実は、「日本ブランド = 安心して高い金額を払えるブランド」という認知が既に存在することを意味します。

ただし、そのまま日本のSKUを持ち込んでも勝てません。インド人の顔形状(鼻ブリッジが低い、こめかみ幅が狭い等)、好まれるフレーム形状(Wayfarerは北部、Aviatorは南西部)、地域別の好みを反映したローカライズが必要です。Lenskartが1,500万件以上の顔データを蓄積してインド向け設計を行っているのは、まさにこの理由です。日本のオリジン×インド適応こそが、現地での持続的な差別化を生みます。

勝ち筋5:「Lenskartが手薄な層」を狙う

これは最も実務的なアプローチです。Lenskartは全国2,270店舗を持ちながらも、構造的に手薄な層があります。

  • プレミアム価格帯(5,000〜25,000ルピー)の医療品質メガネ:Lenskartの主戦場は1,000〜5,000ルピー。Titan Eye+とRay-Banの間の「実用+プレミアム」帯は依然として開いています。
  • 複雑な処方箋への対応:累進レンズ、強度近視用レンズ、特殊コーティングなど、技術力が問われる領域はLenskartでも対応が限定的です。
  • 子供向け医療フレーム:Titan Eye+も注力していますが、近視進行抑制レンズ(Stellest、MiYOSMART等)を扱える店舗網はまだ少数です。
  • メトロ富裕層向け体験型店舗:ムンバイ、デリー、バンガロールの高所得層向けに、日本式の30分カウンセリング+フィッティング体験を提供する旗艦店は十分に成り立ちます。

「Lenskartと正面競争しない」というポジショニングこそが、日本企業の最大の勝ち筋です。

まとめ

インドのメガネ市場は、2033年までに200億ドル前後の規模に成長する確実なトレンドの上にあります。実需の急増、ファッション化、組織化された流通の整備。3つの追い風が同時に吹いている市場は、消費財カテゴリーの中でも稀少です。

ただし、市場にはLenskart、Titan Eye+、Ray-Banといった強力なプレイヤーが既に存在し、彼らと正面競争で勝つのは現実的ではありません。

しかし、彼らが手薄なまま放置している領域は確実にあります。精密なフィッティング技術、グラスの光学精度調整、透明な「コミコミ価格」、日本のクラフトマンシップに対する尊敬、Lenskartが拾えない高品質医療メガネ・プレミアム体験。これらは、まさに日本企業の構造的強みが活きる領域です。

「インドに進出すべきか」ではなく、「自社の強みをインドのどの層に届けるか」を考える段階に来ています。

STORYTELLINGは、日本とインドの両視点から、貴社のデジタルを中心としたインド進出戦略設計・実行支援をさせていただきます。

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参照元

■ 市場規模・成長データ

・IMARC Group「India Eyewear Market 2025-2033」 https://www.imarcgroup.com/india-eyewear-market

・Custom Market Insights「India Eyewear Market Size, Trends, Share, Forecast 2033」 https://www.custommarketinsights.com/report/india-eyewear-market/

・Maximize Market Research「India Eyewear Market – Industry Analysis and Forecast (2024-2030)」 https://www.maximizemarketresearch.com/market-report/india-eyewear-market/21867/

・Coherent Market Insights「India Spectacles Market Size and YoY Growth Rate, 2026-2033」 https://www.coherentmarketinsights.com/industry-reports/india-spectacles-market

・Grand View Research「Eyewear Market Size, Share & Trends」 https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/eyewear-industry

・Fortune Business Insights「Eyewear Market Size, Share & Trends」 https://www.fortunebusinessinsights.com/industry-reports/eyewear-market-101749

・MarkNtel Advisors「Luxury Eyewear Market in India」 https://www.marknteladvisors.com/research-library/india-luxury-eyewear-market.html

・Research and Markets「Eyewear in India」 https://www.researchandmarkets.com/reports/1269003/eyewear_in_india

■ Lenskart

・Wikipedia「Lenskart」 https://en.wikipedia.org/wiki/Lenskart

・Medianama「Lenskart to Launch AI Smart Glasses by March 2026」 https://www.medianama.com/2025/12/223-lenskart-to-launch-ai-smart-glasses/

・Markhub24「Lenskart’s 3D Virtual Try-On: Technology as a Market-Making Strategy」 https://www.markhub24.com/post/lenskart-s-3d-virtual-try-on-technology-as-a-market-making-strategy-in-indian-eyewear-retail

・Finmint「Decoding The Lenskart Business Model」 https://finmint.com/2025/10/lenskart-business-model.html

・Business Standard「Lenskart accelerates store expansion ahead of $10 bn IPO」 https://www.business-standard.com/companies/news/lenskart-accelerates-store-expansion-ahead-of-10-billion-dollar-ipo-125101401379_1.html

・Inc42「Lenskart Launches Japan’s OWNDAYS Eyewear Products In India」 https://inc42.com/buzz/lenskart-launches-japans-owndays-eyewear-products-in-india/

・GrowthX「Lenskart Business Model」 https://growthx.club/blog/lenskart-business-model

■ Specsmakers

・Specsmakers公式「About Us」 https://www.specsmakers.in/en-int/pages/about-us

・Deccan Herald「Specsmakers to add 350 stores in South India in 2-3 years」 https://www.deccanherald.com/india/tamil-nadu/specsmakers-to-add-350-stores-in-south-india-in-2-3-years-3758806

・Business Connect Magazine「Specsmakers」 https://businessconnectindia.in/specsmakers/

・Eyetrraction「5 eyewear chains in India making their mark online and offline」 https://eyetrraction.in/2023/06/01/5-eyewear-chains-in-india/

■ Titan Eye+

・Titan Company「Eyecare Division」 https://www.titancompany.in/business-division/eyecare-division

・Markhub24「Titan Eye+: Building India’s Organized Eyewear Retail Category」 https://www.markhub24.com/post/titan-eye-building-india-s-organized-eyewear-retail-category

・Equentis「Vision to Victory: How Titan Eye Plus Built a ₹900+ Crore Legacy」 https://www.equentis.com/blog/vision-to-victory-how-titan-eye-plus-built-a-900-crore-legacy-in-indias-eyewear-revolution/

・The Drum「Tata-owned Titan Eye+ vision to own India’s unfocused eyecare category」 https://www.thedrum.com/news/2023/01/18/tata-owned-titan-eye-vision-own-indias-unfocused-eyecare-category

・Storyboard18「Tata Group’s optical retail firm focuses on kids and teens」 https://www.storyboard18.com/brand-marketing/tata-groups-optical-retail-firm-focuses-on-kids-and-teens-as-screen-time-surges-among-kids-48459.htm

■ Ray-Ban/EssilorLuxottica

・Wikipedia「EssilorLuxottica」 https://en.wikipedia.org/wiki/EssilorLuxottica

・Wikipedia「Luxottica」 https://en.wikipedia.org/wiki/Luxottica

・Wikipedia「Ray-Ban」 https://en.wikipedia.org/wiki/Ray-Ban

・EssilorLuxottica公式「Ray-Ban | Meta Levels Up」 https://www.essilorluxottica.com/cap/content/254128/

・Fortune「How Ray-Ban maker EssilorLuxottica has disrupted how we see the world」 https://fortune.com/europe/2025/06/04/essilorluxottica-ray-ban-oakley-med-tech-vision/

■ 日本のメガネ産業(鯖江・JINS・OWNDAYS)

・JINS US「Made in Japan Sabae Series」 https://us.jins.com/blogs/library/sabae-made-in-japan

・Orient Opt「The History of Eyewear Craftsmanship in Sabae」 https://orient-opt.jp/en/sabae-history/

・UMEBACHI「Sabae Japan’s manufacturing process of eyewear」 https://oriens-opt.jp/en/process/index.html

・Patek.J「Why Japanese Titanium Is the Gold Standard for Luxury Eyewear」 https://patekj.com/blogs/patekj-blogs/why-japanese-titanium-is-the-gold-standard-for-luxury-eyewear

・LavX News「Japan’s Eyewear Retailers See Surge in Overseas Demand」 https://news.lavx.hu/article/japan-s-eyewear-retailers-see-surge-in-overseas-demand-as-price-disparity-drives-tourist-spending

・Beautaste「Top Japanese Eyeglass Frame Brands」 https://www.beautasteyewear.com/blog/market/japanese-eyeglass-frame-brands-design-strategy/

・Business Standard「OWNDAYS announces its first store in Mumbai, seventh in India」 https://www.business-standard.com/content/press-releases-ani/owndays-a-japanese-eyewear-brand-announces-its-first-store-in-mumbai-seventh-in-india-120110601129_1.html

・Impact「Lenskart Brings Japanese Eyewear Brand OWNDAYS to India」 https://www.impactonnet.com/more-from-impact/lenskart-brings-japanese-eyewear-brand-owndays-to-india-9366.html

■ D2C・その他

・Tracxn「D2C Eyewear Brands – 2026 Market & Investments Trends」 https://tracxn.com/d/trending-business-models/startups-in-d2c-eyewear-brands/

・Birch Posh公式サイト https://birchposh.com/

・Inc42「India’s D2C Eyewear Startups Have Their Eyes On The Prize」 https://inc42.com/features/indias-d2c-eyewear-startups-have-their-eyes-on-the-prize/

著者

STORYTELLING Co-Founder兼CSO(Chief Storytelling Officer)。国際的なローカライゼーションの分野で15年以上、デジタルコミュニケーションの分野12年以上の経験を積み、日本ブランドと海外市場をつなぐことに従事。現在は、インド・中東チームの多国籍チームとともに、日系企業の現地進出をデジタルブランディング&マーケティングを起点に支援する。