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コロナ禍で外出が制限された私たちの生活は日常を取り戻し、オンラインショッピングも現代のライフスタイルに欠かせないものとなりました。一方で、ステイホームを強いられた反動から、オフラインの体験を渇望する声も多くありました。この流れは、人々の購買活動にも変化を起こしています。
インドも例外ではなく、厳格な外出制限を経て、現在は製品のデモンストレーションからパーソナルなサポートまで、プレミアムな体験ができる体験型店舗が急増しています。商品を見るだけではなく、ユニークな体験が店舗でできることがブランドロイヤリティの向上にも繋がります。五感を刺激する没入感のある購買体験が求められています。
そして、2023年4月、インドで初となるAppleストアがムンバイにオープンしました。Appleをはじめ体験型店舗が活況を呈するインド。近年、続々とオープンする体験型店舗の事例をご紹介します。
Appleストア@ムンバイ
4月18日にオープンした店舗は、小売店と教育センターを兼ね備えており、他のApple社の旗艦店同様、技術サポート·サービスのために設計された体験施設「Genius Bar」が設置されます。その他にも、写真、音楽、ゲーム、アプリ開発などのセッションを含む、教育に関するワークショップやイベントも開催される予定です。
店舗で開催されるイベントの他にも、内装が注目されています。インドで作られた45万個の個別木材部材を使用した天井は、ムンバイ店の特徴のひとつです。
Appleストア@デリー
PlayStation Store@デリー
ソニーは、小売業者DT Zone社との提携により、インド初のPlayStation専用ストアをデリーに開設しました。この店舗では、PS5、PS4、PS VR2、ゲーム、アクセサリー、サービスなど、幅広い商品が販売されます。店内は、「プレイステーション 5」の特徴であるブルーとホワイトを基調とし、ルーフにはコントローラーの「四角」「三角」「X」「O」ボタンをモチーフにしたデザイン要素を配置しています。
Alianware@デリー
Dell Technologies社とAlienware(エイリアン)社は、ニューデリーのNehru Placeにあるインド初のゲーミング体験型店舗を運営しています。この店舗では、ゲーマーや愛好家が夢中になれるゲーム体験を提供する事をめざしています。
店内には、エイリアンウェアの最新機種を実際に試せる「バトル·ゾーン」、デルの様々なゲーミング製品をチェックできる「ブラウズ&エクスプロア」コーナー、その他エイリアンウェアの周辺機器を探せる「アクセサリー·ゾーン」などがあります。
店舗は、メタリックなスタイルとAlienwareの要素を取り入れたデザインで、未来的な雰囲気を醸し出しています。e-sportsのゲーム·リーグやコミュニティ·イベントも開催しています。
Samsung@ベンガルール
サムスンはインドで何千もの店舗を展開していますが、そのうち体験型店舗はデリーとベンガルールのわずか2店です。同社は体験型店舗需要が高まる時代の流れに則し、インドでは2024年までに9都市でさらに13の体験型店舗がオープンする予定です。
Samsung Indiaのコーポレート·マーケティング責任者Sumit Walia氏は、体験型店舗拡大について「同社のプレミアム·ストアを通じて、ハイエンド製品販売が増加してきた結果である。」と述べています。
サマリー
デジタル上におけるデータ集積により、ブランドは繋がりたいオーディエンスとの関係性構築がしやすくなり、多くの企業がROIの高いデジタル戦略にコーポレートアクティビティを移行をしています。
一方で、オーディエンスの視点ではこの逆説が存在しています。今、私たちの目の前に大量に流れてくるデジタルコンテンツの多くは、オフラインイベントやオフラインの体験をデジタル化しているコンテンツであり、オーディエンスはリアルでのライブ感ある体験を求めていることも事実です。ブランドは一貫してオフラインそしてデジタルでの体験を提供することでオーディエンスとの繫がりを築き、ブランドの信頼を構築しています。
インドで商業施設運営などを手がける不動産会社Trehan Iris社のエグゼクティブディレクターAbhishek Trehan氏は、「小売業は、基本的な販売活動から体験型センターへの大きな移行を遂げています。買い物に出かけるという行動は、便利なオンラインショップとの競争にさらされており、外出を計画する動機付けが必要になっています。」と話します。
体験型店舗により、顧客は、適切な 商品を手に入れることができ、ブランド側も顧客趣向と今後の購買予測が強化できるでしょう。大手ブランド製品のイメージアップだけではなく、どのように小売各業種各社に浸透して行くのかについても関心が集まります。
Marina Ogino
2019年、獨協大学経済学部卒業。在学中、チュラロンコン大学に一年間留学しタイ語を習得。タイの動画制作会社と農業ベンチャーでインターンシップを経て、株式会社日本農業に入社。海外営業部に所属し、駐在中は事務所の立ち上げ、営業・マーケティングを担当。2022年1月からインドに移住し、同年6月にSTORYTELLING LLPにGMとして入社。日本語、タイ語、英語話者。