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インドのインフルエンサーマーケティングトレンドと事例ご紹介、選定時の注意点まで

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インドにおけるインフルエンサーマーケティング市場は、年間平均25%で成長し、2026年までに市場規模は280億インドルピーに達するとも言われています。

インフルエンサーマーケティング・プラットフォームのInfluencer.inが発表したレポートによれば、調査対象となったインドのブランドの61.2%が、インフルエンサーマーケティングはブランド認知度を高めるために効果的であると回答し、マーケティング担当者の50%が、デジタルマーケティング予算の最大10%をインフルエンサーに年間費やしていると回答しています。

数多くのオンラインプラットフォームやエージェントサービスの普及も追い風となり、企業が気軽にインフルエンサーを探してユーザージェネレイトコンテンツ(UGC)を依頼できるようになりました。デジタルマーケティング施策のひとつとして、もはや無視できなくなったインフルエンサーマーケティングですが、すべてのインフルエンサーコンテンツが企業の期待通りの成果をあげているとは言い切れません。

今回は、STORYTELLINGでインフルエンサーマーケティングエキスパートのAvi氏と共著で、業界勃興の背景と現在のトレンド、そしてインドでインフルエンサーを選定するときの注意事項についてお伝えしていきます。

オフラインの流通がストップしたパンデミック禍のインドはデジタルコンテンツ黄金時代を迎えました。多くの小売業がオンラインプラットフォームでの販売へと迅速に移行したこと、ユーザーがデジタル上でのリサーチに時間を費やすようになったことで、SNSでの滞在時間が増え、インフルエンサーマーケティングも同時に加速しました。

「知らない誰か」より「知っている誰か」の意見がより大切

大前提として、インドでは日本と比較して、知らない誰かが伝えていることより身近な誰かが言っている情報価値が高い傾向にあると感じています。口コミが高く評価される理由はいくつかあります。

インド人は、他国と比較して、家族や友人、知人など自分が属するコミュニティへの信頼と繫がりを強く持つ文化です。個人的な繫がりがある人は自分の利益を一番に考えており、正直な意見をくれると信じています。

信頼、信用、個人的なつながり、文化的価値観、コミュニティ内での信頼できる情報の必要性から、口コミはインド人の文化において非常に重視しされており、消費者の選択、ビジネス上の意思決定、社会的交流の形成において重要な役割を果たし続けています。

インフルエンサーが人気を博している一つには、この「信頼できる誰かに聞く」行為をダイレクトメッセージで気軽に質問することが可能なデジタルプラットフォームとして活用されていることが言えるでしょう。

セレブリティから身近な存在への憧れの移ろい

インフルエンサーマーケティングの繁栄以前、インドの広告塔は煌びやかなビジュアルのボリウッド俳優や、クリケット選手が独占していました。しかしながら、人々のライフスタイルや価値観の変容に伴い、自分の価値観に近く、より身近で親しみやすい人がフォロワーを獲得するようになってきています。

ボリウッドスターのような、手の届かない憧れよりも、自分の普段のライフスタイルが少しだけアップグレードされるようなコンテンツを共有してくれる1万人から10万人ほどのフォロワーを保有するマイクロインフルエンサーレベルのアカウントへ人気が集まっています。上記でも解説したように、これらの規模感のインフルエンサーは、ダイレクトメッセージで直接繋がることが可能であることも、魅力の一つです。

インフルエンサーマーケティングサポートサービスを展開するAffable.aiのレポートからは、2022年時点でメガインフルエンサーよりも、ナノ・マイクロインフルエンサーのエンゲージメント率が高く、オーディエンスとの繫がりが強いことが分かります。

インドではTikTokが禁止。インフルエンサーのプラットフォームはYouTubeとInstagramが主流

現在のインドのトレンドとして、インフルエンサーはYouTubeとInstagramを主要プラットフォームとして使用しています。コンテンツのトレンドは、45秒以下のショート動画です。

大量のコンテンツを社会のトレンドやオーディエンスの声と対話するように手軽に生成、に柔軟に反応しながら迅速に作り配信ができ、短い時間で有益な情報をキャッチできるショートビデオ(60秒前後)の相性は良く、ショートビデオの流行はインフルエンサーマーケティングの加速に拍車をかけています。

ショート動画と言えば、世界的にみるとTiktokが外せないプラットフォームの一つです。インドでは2020年に国家安全保障上の理由で利用が禁止されました。

ビジネスニュースプラットフォームFindly.inのレポートによれば、インドでTikTokの利用が禁止される以前は、アメリカの倍以上のユーザー数を誇り、インドが世界最多のTikTokダウンロード数を記録していました。

TikTokが禁止されたタイミングで、この動きをチャンスと捉えたMetaは、同年Instagramからはリールを、YouTubeからはShorts(ショーツ)の機能を追加し、インドの多くのTikTokユーザーを獲得しました。

さらに同年2020年には、インド発のショート動画コンテンツプラットフォームMOJもローンチされています。インド発のプラットフォームとして、地域言語コンテンツに強く、タミル語の視聴者数が最多の約71%、次いでテルグ語、ボジュプリ語です。地域言語で作成された動画は3億本を超え、総再生回数は500億回に達し、多言語国家であるインド市場においてMetaのサービスとは一線を画すポジションを獲得しました。

MOJでもインフルエンサーマーケティングはアクティブであり、2022年は75以上のブランドとコラボレーションし、150近いインフルエンサーを起用したキャンペーンが開催されています。

インド業界別、トレンドインフルエンサー紹介

ファッションや美容、旅行や料理など、インフルエンサーたちはそれぞれ得意分野とするトピックが異なります。

ここでは、インフルエンサーのカテゴリーを6つに分け、それぞれ今インドで人気のメガインフルエンサーをご紹介します。(※メガインフルエンサー=フォロワー数100万人以上)

音楽

メガインフルエンサー Awez Darbar

  • フォロワー数 2,940万人(2023年6月時点)
  • 職業 ダンサー、振付師
  • 居住地 ムンバイ
Awez Darbar サッカー教室とのタイアップ

Awez Darbar氏 サッカー教室とのタイアップ投稿

ライフスタイル

メガインフルエンサー Aashna Shroff

  • フォロワー数 96.7万人(2023年6月時点)
  • 職業 ファッション、美容、Youtuber
  • 居住地 ムンバイ
Aashna Shroff ランコムタイアップ投稿

Aashna Shroff氏 ランコムとのタイアップ投稿

美容

メガインフルエンサー Malvika Sitlani

  • フォロワー数 65万人(2023年6月時点)
  • 職業 モデル、美容ブロガー
  • 居住地 ムンバイ

Malvika Sitlani氏 The Ordinaryとのタイアップ投稿

ファッション

メガインフルエンサー Masoom Minawala Mehta

  • フォロワー数 136.9万人(2023年6月時点)
  • 職業 コンテンツクリエイター、EコマーススタートアップCEO
  • 居住地 ムンバイ
Masoom Minawala Mehta氏 ファッションEC Aspinal of Londonとのタイアップ投稿

Masoom Minawala Mehta氏 ファッションEC Aspinal of Londonとのタイアップ投稿

旅行

メガインフルエンサー Savi and Vid

  • フォロワー数 125.7万人(2023年6月時点)
  • 職業 フォトグラファー、旅行ブロガー
Savi and Vid氏 VisaIndiaとのタイアップ投稿

Savi and Vid氏 VisaIndiaとのタイアップ投稿

料理

メガインフルエンサー Ranveer Brar

  • フォロワー数 251万人(2023年6月時点)
  • 職業 シェフ、コンテンツクリエイター
  • 居住地 ムンバイ
Ranveer Brar氏 kelloggsindiaとのタイアップ投稿

Ranveer Brar氏 kelloggsindiaとのタイアップ投稿

こういったインフルエンサーを実際に各インドブランドはどのように活用しているのでしょうか。ここからは、2つの消費財ブランドを事例にご紹介いたします。

事例 | メガインフルエンサーとマイクロインフルエンサー起用の相乗効果 - Mamaearth

パーソナルケア製品などを手掛けるインドの新興企業Mamaearthは、新生児でも安心して使える原材料で作られたブランドとして知られています。前年比平均491%の収益成長を記録するほど急速な成長を遂げる当ブランドは、戦略的なインフルエンサーマーケティングで確実に効果をあげています。

一般的に、インフルエンサーマーケティングでは、ブランドのマーケティング戦略によってインフルエンサーの規模感を決めます。セレブリティの起用はブランド認知拡大を目的に、名のインフルエンサーはブランドエンゲージメントを高める目的で起用します。

新生児でも安心して使えるという、インドにおいて新しいバリューポジションを獲得するため、500人のママブロガーを起用してコンテンツ配信を行いました。安心や安全が購買要因となるプロダクトは、身近な人の口コミが有用であるという心理を刺激しました。

さらに、Mamaearthはブランディング戦略の一環で2人のセレブリティをブランドアンバサダーとして起用しています。

自然由来の製品を好む傾向にあるミレニアル世代から支持を受けるセレブリティ、Shilpa Shetty Kundraを1人目のアンバサダーとして選出しました。2児の母親であり、日常的にフィットネスを行い、健康的でありのままの生活をインスタグラムでも公開する彼女のイメージは、Mamaearth の環境配慮や透明性のあるブランドコミュニケーションとも合致しています。

また、エリア戦略の一環としてSamantha Ruth PrabhuもMamaearthのブランドアンバサダーとして選出されています。南インドで絶大な人気を誇り、1人目のアンバサダーShilpa氏よりもファンの年齢層が低いSamantha氏の起用で、Z世代へのブランド認知度を広めることに成功しました。気取らない普段の生活を切り取ったような親しみやすいコンテンツは、インドのセレブリティの中でも珍しく、Mamaearthの自然由来のコンセプトとも親和性があります。

事例|インフルエンサーを通じてモノをコト売りへ - lenskart

インドのアイウェア新興企業の1つであるLenskartは、手頃な価格でデザイン性のあるアイウェアブランドとして注目を浴びています。ブランド認知度の獲得に効果を発揮したのが、セレブリティインフルエンサーとマイクロインフルエンサーの起用でした。

セレブリティインフルエンサーには、ボリウッド女優のKatrina Kaifをブランドアンバサダーとして起用し、インド市場ではまだ珍しかったブルーライトカットメガネを新しくクールな商品としてブランディングに成功しました。

さらに、YouTuberBhuvan Bamともコラボレーションし、ただ視力矯正機能を持つプロダクトとしてのアイウェアを、日常をアップデートするファッションアクセサリーとしてのアイデアを発信しています。

このように、商品価値の転換やブランドポジションの獲得というマーケティングの上位概念であるブランディング施策として、lenskartは戦略的にセレブリティインフルエンサーを起用しています。

同時に、購買により繋がりやすいマイクロインフルエンサーとして、インド人実業家のNaina Ruhaiや、ボリウッドダンサーのTanya Bhushanが起用され、ビジネスマンや若い世代の取り込みに成功しています。

インドでインフルエンサーを選定する時の注意点

インフルエンサーであれば誰もが企業のメッセージや目的を理解し、効果的なコンテンツを作成できるわけではありません。そのインフルエンサーのニッチカテゴリーや、フォロワー層を分析してこそ、ブランドは、自社ブランドのファンになり得る層へリーチし、エンゲージメントを獲得していくことにつながります。

ここからは、STORYTELLINGのインフルエンサーマーケティングエキスパートのAviが、インフルエンサーを選定するときに気をつけている点についてご紹介します。

1. ブランドの世界観とインフルエンサーとの親和性

インドでインフルエンサーを選定する際に、そのインフルエンサーとブランドの世界観の合致について注意する必要があります。ブランドのアイデンティティやパーソナリティは、インフルエンサーの思考やライフスタイルに馴染むかどうか、インフルエンサーの発言やコンテンツのコンセプトはブランドの良さを伝えるためにプラスの影響を与えるかどうかが重要です。

2. フォロワーの属性分析

フォロワーの性別やエリア、年齢などの属性の傾向は、インフルエンサーを選定する際に重要な情報源となります。一般的にそのインフルエンサーに対して持ってているイメージと、実際のフォロワーの属性に乖離がある場合もあります。インフルエンサーマーケティングの戦略では、自社がリーチしたいターゲットオーディエンスのペルソナを具体的に設定し、実際にそのような人々が該当のインフルエンサーをフォローしているかどうかを分析してやっと、施策の価値最大化ができるのではないでしょうか。

3. インフルエンサーのアカウント信頼性

ここが最も注意していただきたい点です。インドでは、多くのインフルエンサーがフォロワーを購入しています。インフルエンサーを起用する場合は、そのインフルエンサーが信用に値するアカウントかどうか見極める必要があります。

フォロワーがオーガニックで獲得したものであるか、いいね数やコメント数、投稿頻度、コンテンツのクオリティを丁寧に分析する必要があります。

サマリー

SNSが人々の日常生活の一部となり、毎日大量のコンテンツが消費されるようになった現代、インフルエンサーコンテンツが持つ影響力も日々大きくなっているように感じます。特に、Z世代の中には広告へ不信感を持つ人も少なくなく、より本質的で信頼できる身近な人やインフルエンサーの声を尊重する動きがトレンドとなっています。

デジタル・ネイティブは、ブランドの世界観とインフルエンサーのパーソナリティに繫がりや一貫性があるかを見抜きます。この一貫性が、ブランドへの信頼やエンゲージメントを醸成します。自社のブランドポジショニングを、正確にターゲットオーディエンスに届けるためにも、インフルエンサーの人選は、見抜く力のあるプロフェッショナルを活用して慎重に実施していきましょう。

STORYTELLINGでは、市場トレンドをしっかりと抑え、企業様の世界観をインドのオーディエンスへ届けるためのインフルエンサーマーケティングサポートも行っています。加速するインドのインフルエンサーマーケティング市場で、ブランド価値向上の一助となれましたら嬉しく思います。

2019年、獨協大学経済学部卒業。在学中、チュラロンコン大学に一年間留学しタイ語を習得。タイの動画制作会社と農業ベンチャーでインターンシップを経て、株式会社日本農業に入社。海外営業部に所属し、駐在中は事務所の立ち上げ、営業・マーケティングを担当。2022年1月からインドに移住し、同年6月にSTORYTELLING LLPにGMとして入社。日本語、タイ語、英語話者。

 

 

2019年に設立されたStorytelling LLPは、インドグルガオンを本社に置く日系企業です。企業様のビジネスにおける強みを理解し、それぞれのユニークなストーリーを世に送り出すことをミッションとしています。現地における市場調査をもとに、カスタマイズされたデジタルブランディング、デジタルマーケティング戦略を通じて、企業の持続的な成長を支援します。
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