人口14億人を超えるインド市場では、高度医療へのニーズが年々高まる一方で、競合となるグローバル企業もその勢力を高め、ブランド認知の浸透や信頼できる現地人材の確保は、多くの日系医療ブランドにとって共通の課題です。
本ケーススタディでは、日本を代表する医療機器メーカーである日本光電のインド子会社、日本光電インディアが、LinkedInを活用して現地での採用力と従業員との繋がりをどのように強化したかを詳しくご紹介します。
成果ハイライト
- LinkedIn経由でローカル人材採用の44%を達成(2024年)
- フォロワー数15,000人増加、開始時の2倍に拡大
- 回答者の72%が「従業員のモチベーション向上に貢献」と回答
- 回答者の75%が「クライアントからの評判向上」を実感
- 回答者の80%が「自社の印象が向上した」と回答
*「回答者」とは、2025年7月に実施した日本光電インディア社内向け匿名アンケートに回答いただいた108名の従業員を指しています。
* 回答結果の数値は、小数点第一を四捨五入した数値を掲載しています。
日本光電インディア様会社概要
日本光電は、日本発の医療機器メーカーとして、心電計・生体情報モニタ・AEDなど、命を守るための革新的な技術によって精度の高い医療機器を開発してきた70年以上の歴史を持つ企業です。現在は、世界120以上の国と地域に展開するグローバル企業へと成長を遂げています。
インド市場へは2011年に本格参入し、以来、長年にわたる現地に根差した営業活動とパートナーシップによって着実に信頼を築いてきました。近年では、急速に進むインドの医療インフラ整備に呼応するかたちで事業を拡大し、2024年には検体検査用試薬の日本国外生産拠点としてはグローバル最大規模となる総床面積約8,900㎡の工場をインドハリヤナ州に新設。将来的には、アジア全域への供給能力強化も視野にいれ、インドにおけるさらなる事業拡大を図っています。
製造、販売、カスタマーサービス、バックオフィスの各部門において現地人材の積極的な採用と育成を進めながら、高品質な医療機器と迅速なサービスが提供できる体制をインド全域へ広げ、インドの医療現場を支えています。
ご依頼の経緯
新興国市場への事業拡大に際して、人材採用と定着の難しさは多くのグローバル企業が抱える共通課題です。特に、インドでは転職文化が一般的であり、採用コストの高騰や人員の入れ替わりによるサービス提供の不安定化が慢性化しがちです。また、退職者によるレピュテーションリスクなど、人材に起因するリスクも顕在化しています。
日本光電インディア様からは、特に以下の3つの点を改善していきたいというご相談をいただきました。
- 競合の勢力的なデジタルプレゼンスの高まり
競合他社では、ソーシャルメディアでのPR活動を通じて、企業ブランドやインド市場における取り組み、製品の特徴や魅力などを積極的に発信し、デジタル上でのプレゼンスを強めていました。競合他社がデジタル上での存在感を強めていく中、日本光電インディア様でもソーシャルメディアを活用した戦略の見直しが必要となっていました。 - 採用活動の強化
従来は、従業員からのリファーラルや人材紹介会社を中心としていた採用活動ですが、地方拠点での営業職など、ミドル層の人材確保も充実させていきたいというご意向でした。人材採用およびB2Bに適正のあるソーシャルメディアLinkedInを活用し、企業の魅力を伝える広報・ブランディング戦略および人材募集をインド全域へ発信していくことが求められていました。 - 採用定着率の改善
インド子会社の組織規模の拡大に伴い、メンバー間のつながりやエンゲージメントの向上が課題となっていました。そこで、社内向けのブランディングをLinkedInを活用して強化し、会社へのロイヤリティ向上による採用後の定着率の改善を図りたいというご相談をいただきました。
提供サービスと支援内容
これらの課題に対応する施策として、LinkedInマーケティングを2年間にわたり実施してまいりました。採用活動の活性化を主軸に、マーケティング活動への活用なども視野に入れ、一貫したデジタルブランディングとソーシャルメディアプラットフォームの積極的活用によって、社内外コミュニケーションの強化を目的とした具体的施策を以下にご紹介いたします。
1. インド市場を対象としたブランドシステムの構築
日本本社ではブランドガイドラインなどのブランドシステムが明確に定義されていますが、多くの日系企業では、ソーシャルメディアにおける海外向け運用ガイドラインがまだ確立されていません。
弊社では、日本本社のブランドガイドラインを尊重しつつ、インド市場に適したビジュアル設計(視覚的にわかりやすいデザインテンプレートやフォント選定など)を提案。グローバルにおける日本光電のブランドイメージを損なうことなく、現地ユーザーに受け入れられやすいアプローチを実施しています。
2. LinkedInアカウントの運用・管理
3. インド子会社、およびインド市場に適したコンテンツの企画・制作
日本光電インディアのインド市場においての強みである「技術・規模・品質・企業文化」といったポイントが医療従事者や採用候補者に伝わるよう、コンテンツを戦略的に企画・制作。
CxOによるソートリーダーシップ、従業員インタビュー、工場オープニングセレモニーの動画、製品特長にフォーカスした動画やグラフィックなどを中心に制作しました。
また、従業員の方に積極的にコンテンツに登場いただくことで、企業ロイヤリティの向上を試みました。
LinkedInによる採用強化の一環として、求人情報を盛り込んだビジュアル投稿を定期的に実施し、インド全域への認知と応募を促進しました。
4. アンケート調査を活用した定点観測と改善サイクルの運用
ソーシャルメディアマネジメントシステムを活用し、毎月の投稿コンテンツの効果をKPIに基づいて計測・分析。成果が見られないコンテンツは停止し、反響の大きいコンテンツは継続・強化するという、シンプルかつ実効性の高い改善サイクルを構築しました。
あわせて、毎月の競合分析や業界トレンドリサーチを実施し、変化の早いソーシャルメディア環境に柔軟に対応しています。
また、初めての試みとなる社内向け匿名式アンケートを実施し、LinkedInマーケティングによる従業員からみた有効性を定量的に測定しています。
成果
1. LinkedIn経由でローカル人材採用の44%を達成(2024年)
LinkedInを活用した採用戦略により、2024年のローカル人材採用のうち44%を同プラットフォーム経由で獲得。課題となっていた、地方の営業担当者とミドル層の確保に成功。企業文化やUSPを理解した上での応募であるためマッチング率も高くなった。
2. LinkedInフォロワー数:15,000人増加(開始時より2倍)
アカウント運用開始から2年でフォロワー数が15,000人増加し、デジタルプレゼンスを大幅強化。採用・営業におけるブランド接点が広がり、日本光電の強みや企業文化を自社発信型のインパクトのあるプラットフォームへ成長。
3. 72%が「従業員のモチベーション向上に貢献した」と回答
4. 75%が「クライアントからの評判が高まった」と回答
5. 98%が「ブランド認知度が向上した」と回答
6. 80%が「自社への印象が向上した」と回答
7. 日本本社からの高評価
日本光電インディア川端MDより
LinkedIn施策導入時より伴走いただいている川端MDに、2年間を振り返ってのフィードバックをいただきました。
─インパクトを感じた施策はありましたか?
SNS運用においては、計画的かつ継続的な発信を行うことで、常に閲覧者とのタッチポイントを維持することが何より重要だと感じています。
その上で、特に印象的だったのが「現地社員のインタビュー動画」です。これは社内外ともに高い関心を呼び、エンゲージメント向上にも大きく寄与したと感じています。閲覧者との心理的な距離を縮め、ブランドへの信頼感を醸成するという点で、非常に良い効果がありました。
─外部委託して良かったと感じた業務はありますか?
初期フェーズでの現状分析、課題抽出、問題特定、アクションプランの策定において、ストーリーテリングと伴走できたことは非常に意義がありました。自社のみで進めていた場合、経験値やリソースの制約により、重要な観点の見落としや手戻りが発生していた可能性が高いと思います。
また、SNSプラットフォームの状態管理や、常に最新の状態にアップデートし続ける運用体制、コンテンツ企画から制作・投稿までを見据えた一連のスケジューリングも、計画性と質を両立させるうえで支援となりました。
─ストーリーテリングだからこそ出来たことはありますでしょうか?
─LinkedIn採用に必要な社内体制と考え方があれば教えてください。
LinkedInでの採用は、ただ採用情報を投稿すれば効果が出るわけではありません。アカウント自体が適切に運営されていない状態で採用情報だけを発信すると、かえってネガティブな印象を与えてしまう可能性があります。だからこそ、段階的かつ戦略的に準備を行った上で導入に踏み切る必要があると実感しています。
私たちもすべてのポジションをLinkedInで採用しているわけではありません。LinkedIn運用の目的や採用すべきポジションなど、社内でルール化した上で活用しています。
SNSをダイナミックに活用する
日本光電インディア様の取り組みは、単なるSNS活用にとどまらず、「企業の価値を見える化し、社内外に伝える」ための戦略的コミュニケーション設計であり、今後インド市場に参入する日系企業にとって有効なロールモデルとなりうる実践例といえます。
インドは、LinkedInユーザー数でアメリカに次ぐ世界第2位を誇り、さらにモバイルを中心としたビジネス文化が根付いている市場です。日本光電インディア様の社内アンケートでも98%がLinkedInを使用していると回答がありました。
こういった背景から、ソーシャルメディアマーケティングがビジネスに与える影響は他国と比べて非常に大きいといえます。
本ケースは、そうしたインド特有のデジタル環境を効果的に活用することで、ブランディングやマーケティングのコストを最適化しながら、インド全域へのアプローチを可能にした実証例となりました。
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