「コンテンツは量産した。広告も回した。それでも、成果につながらないのはなぜか?」
B2B企業がインド市場でデジタルマーケティングを導入する際、こうしたジレンマに直面することは珍しくありません。短期的成果が見えづらく、初期投資の判断も難しいなか、ローカルエージェンシーを活用し、まずはデジタルの基盤を構築する──これは、多くの企業が取る現実的な第一歩です。
本ケーススタディでは、インドでステンレス貯水タンクの製造・販売を展開するベルテクノ・インディア様のデジタルマーケティング施策全容と、ローカル施策から次のフェーズへと進む過程で、「KPI主導型のマーケティング体制」へどのように移行し、営業の質と成果をいかに向上させたかを具体的に紹介します。
注:本ケーススタディは、2023年に発行されたホワイトペーパーをオンライン記事用に編集したものです。定量・定性データ情報は2023年時点のものとなりますことをご了承ください。
成果ハイライト
- 6ヶ月で見込み客の質を 80%改善、営業活動の質を向上
- 低品質キャンペーンへの投資を削減し、高効率施策へ予算配分を改善
- 新ターゲット層(新カテゴリー・エリア・リードタイム短期案件)を創出
ベルテクノ・インディア様会社概要
1947年創業のベルテクノ株式会社(本社:名古屋市)は、水回りの建築設備などを扱う建材メーカーで、2009年よりインドにて商業用・産業用ステンレス貯水タンクの製造・販売を展開。
日本特有の精密なエンジニアリング、国際的な品質基準の遵守、顧客中心のアプローチをデジタル上で発信することで、現在、信頼性の高い産業用貯水ソリューションを保証するブランドとして、インド貯水タンク市場のトップ10ブランドとして認知を広げています。
ご相談いただいた経緯
ベルテクノ・インディア様では、2017年という比較的早期からインド市場における営業活動のデジタル化に取り組み、顧客管理システム「Hubspot」の導入を皮切りに、自社ウェブサイトをハブとしたデジタルマーケティング施策を展開してきました。
2022年までの約4年間、ローカルエージェンシーとの協業により、Webサイトの構築、SEO対策、リスティング広告、ブログによるコンテンツマーケティングなどマルチチャネルを駆使した抱括的デジタルマーケティング活動を実施していました。
その成果もあり、最高月でWebサイトは50,000ページビュー、18,000人のユーザー流入、140件の見込み客を獲得されていました。
数字だけ見ると大変好調に見えたデジタルマーケティング施策でしたが、営業チームより以下のような意見が上がってくるようになりました。
- リードの量が多く、質が低いことによる営業負荷の増加
実際に案件化に至る見込みの薄いリードが多く、インサイドセールスが大量のフォローアップに追われ、営業活動の効率が低下していた。 - 目的、KPI管理や仮説検証が不十分
旧エージェンシーはクリック率やリード単価など一般的な数値をレポートしていたものの、「なぜ見込み客の質が改善されないのか」「どの施策が、もっとも機能しているのか」といったクライアントが知りたいことに対する回答や、課題に対する改善提案が行われていなかった。
ストーリーテリングでは、前エージェンシーとの半年の引き継ぎ期間を儲けて、それぞれの施策のデータや、ワークフローの検証を実施し、そもそもエージェンシーを変更するべきかどうかという検討段階から導入支援させていただきました。
検証期間には、以下の課題も浮き彫りになりました。
- ターゲットとなる潜在顧客像(ペルソナ)をエージェントが認識ができていない。
- 顧客管理システム(Hubspot)のワークフローとルールが属人化していた。
- ウェブサイトが最新アルゴリズムに合わせて設計されていないためSEOランキングが不安定になっていた。
導入施策
これらの移行期間を経て、ベルテクノインディア様は2023年1月より全てのデジタルマーケティング活動を弊社へ委託することを決定。ストーリーテリングでは、以下のような施策を実施し、改善に努めました。
1. ペルソナの再定義と明文化
2. Hubspotのワークフロー・ライフサイクルステージの再設計
顧客管理システムでは、見込み客の質やフェーズをMQL(マーケティング有望リード)/SQL(営業有望リード)などのステージに振り分けますが、当時この運用が不明確であったため、リードの質の評価ができない状態にありました。
この定義をベルテクノ様のローカルチームと見直し、社内プロセスとHubspotの定義を統一。これにより、インサイドセールスからのフィードバックがシームレスに関係者へ共有されるようになりました。
3. ウェブサイトの構造化とキーワード戦略の再構築
4. 各キャンペーンの仮説検証と最適化
旧エージェンシーでは未設定だった検証項目(エリア別・キーワード別の効果)を導入し、4か月かけて広告キャンペーンを再設計。
また、広告キャンペーンなど全てのリード獲得キャンペーンとHubspotを連携し、かつ営業担当者からのフィードバックが実装されるようになったことで、どのキャンペーンが高いリードを獲得に貢献しているかが徐々に明確になりました。これにより、無駄な予算配分の見直しと効果測定を可能にしました。
5. コンテンツ戦略の再構築
営業現場の声や顧客からの質問をベースに、より実務的かつ専門性の高い記事を企画・制作。週次でローカル責任者と議論を行い、営業担当者と見込み客や顧客との対話をヒアリングし、現場とお客様が必要な真のコンテンツが何であるかを特定し、現場に即したリアルな内容を継続的に発信しました。
成果
リードの質を大幅に改善(MQL転換率 80%向上)
低品質キャンペーンへの投資を削減し、高効率施策に集中
営業活動の質が向上、現場のモチベーションも改善
新たなターゲット層を発掘、将来的な売上成長の土台を構築
インド市場におけるB2Bマーケティングの第一歩
B2Bのデジタルマーケティングをインド市場で導入する初期段階では、短期的な成果が見えづらく、初期投資に対するリターンの不透明さから、大規模な予算確保に苦慮する企業が少なくありません。
こうした背景から、多くの企業がインドのローカル系エージェンシーを活用し、低コストで大量のコンテンツ制作や広告運用を通じて、まずはゼロから土台を築き、デジタルプレゼンスの確立を目指しています。
この方針に対し、私たちストーリーテリングは必ずしも反対の立場ではありません。ローカルエージェンシーは、納品物の量産とコスト最小化という点で一定のメリットを持ち、現地チームにも受け入れられやすい選択肢です。すべての施策を、高価格帯となる日系パートナーに切り替えることで、コスト負担が急増することへの懸念は、日本人マネジメント層の間でも共通認識として存在していました。
安価なローカルエージェンシー活用から、KPI主導の戦略へ
しかしながら、KPIが「量」から「質」へとシフトする局面では、状況が一変します。
ベルテクノ・インディア様のケースでは、営業効率の向上や高品質リードの獲得といった次の成長フェーズに移行するタイミングで、既存エージェンシーによる施策の限界が明らかになりました。KPI設計や仮説検証のフレームワークが存在しないエージェンシーでは、ボトルネックの特定や改善提案ができず、デジタルマーケティング戦略の進化が止まってしまいます。
事業や市場環境が変化する中で、エージェンシーに求められる役割も変わります。定期的なパートナー評価と柔軟な見直しが、今後の成長を左右する重要な鍵となります。ベルテクノ・インディア様は、ストーリーテリングへのエージェンシー移行を通じて、現地特有の課題に対応した営業DXの推進を実現しました。
変化の激しいインド市場では、「正しいパートナーの選定」と「継続的な仮説検証」こそが、B2Bマーケティング成功の鍵です。安価なローカル施策で土壌を整えた上で、戦略転換のタイミングを見極めることが、着実な成長を導くステップとなります。